みなさん、お肉は好きですか?どんなお肉をよく食べるのでしょう?「牛肉、豚肉、鶏肉はスーパーで購入してよく食べる」という方が多いかと思います(「ジビエとは何の肉?」で紹介したようなお肉を普段から食べている方は少ないのではないでしょう)。
と言っても焼肉屋へ行くと牛肉にもいろいろあることに驚かされるのではないでしょうか?「牛肉」という言葉で一括りにはできないほどいろんな部位がありますよね。
「これって牛のどこの部位なのだろう」
「どんな食感なのだろう」
「どんな味で脂の乗り具合はどんな感じだろう」
と思いながら恐る恐る注文する方もいらっしゃるかと思います。
今回はそんな牛肉の部位の名前とどんなお肉なのかをずらーーーっとご紹介します。頭の中に牛を思い浮かべながらご覧ください。
目次
頭から首にかけての部位

タン
みなさんおなじみの舌のお肉です。タンはタンでも「タン下」というのもあります。これは舌の根本の部分で、より固めな部位です。タンはシチューや炒め物にも使います。
ホホニク
頬の奥の方のお肉です。歯ごたえがあり、旨味も強い部位です。シチューや煮込み料理にも使います。
ネック
ネックはその名の通り「首」のお肉です。味が濃厚で脂肪分が少なめの部位です。これもシチューや煮込み料理などに使われます。また、ひき肉にもされます。
ネクタイ
食道の部分のお肉です。「ホルモン」でもある部位ですが、味も見た目も赤身肉に近いです。「ノドスジ」とも呼ばれます。
ウルテ
こちらも「ホルモン」であります。ホルモンの中でも最も硬いといわれる部位で、のどの気管にあるお肉です。
肩あたりの部位

ミスジ
牛1頭から2kg程しか取れない幻ともいわれる部位です。肩甲骨の裏側にあり、木の葉のような形をしています。赤身で細かなサシが入り、とてもおいしいです。
ウワミスジ
ミスジの上、肩甲骨の上にあるお肉で、旨味と柔らかさを持つ赤身です。脂肪分が少なく、さっぱりいただけます。
肩サンカク
肩から前足の上側にある部位で丸みをおびた三角形をしています。A5やA4の和牛ではサシが入り、味が濃厚な赤身です。ステーキにもよく使わられます。
トウガラシ
トンビとも呼ばれます。肩甲骨付近に位置します。肉質は腿(もも)肉に似ていて、脂は適度にのっているもののさっぱりした味を持った部位です。焼き過ぎるとパサつくのでローストビーフやユッケなどに使われます。
ザブトン
肩ロースの一部であばら骨に近い部分のお肉です。サシが入り、脂身と赤身の旨味を両方とも味わえます。「上カルビ」として出されることもあります。
肩芯
「肩ロース芯」とも呼ばれ肩ロースの中心部分にあります。サシが入っていて、ジューシーです。
●背中当たりの部位

リブロース
サーロインと肩ロースに挟まれた部分にあります。きめが細かい赤身です。
リブロース芯
リブロースの中心部にあります。柔らかくてきめの細かい肉質で、しつこくない脂と赤身の旨味のバランスも最高です。
リブキャップ(リブカブリ)
リブロースの上に覆いかぶさるように乗った部分です。脂が多く、くどく感じる方もいると思います。
サーロイン
リブロースの後方で、腰の前方にあります。「牛肉の王様」ともいわれる部位です。サシも入りサーロインと言えば「ステーキ」という言葉が続くイメージが大きい部位ですが、しゃぶしゃぶやすき焼きにも使われます。ヒレ肉に次ぐ柔らかさです。
ちょっとブレイクー「ロース」は和製英語

よくスーパーなどお肉コーナーなどでも「ロース」という言葉を目にすると思います。実はこの「ロース」は「ロースト(roastあぶり焼く)」から作られた和製英語です。
「ロース」とは肩ロースとリブロース、サーロインを合わせた部位を言います。ちなみに英語では「ロイン(loin・腰肉)」と言います。リブロ-スの「リブ(rib)」はあばら肉を意味します。
では「サーロイン(sirloin)」は・・・
「loinにsir、「sir」は貴族や上官など、位が上の人に敬意を払う意味で使う「sir」だから「高級な腰肉」?」
と思った方、あなたの英語力に「はなまる」をあげましょう。諸説ありますが、
イギリスの国王ジェイムス1世があまりのおいしさの褒美に「sir」の称号を与えたという説、
サーロインのsirは位が上の人などを表す「sir」違い、接頭語「sur(上部の)」が変化したものだという説
などがあります。
マキ(フカヒレ)
リブロースの周りを巻き付くような位置にあります。リブロースの周りをまきつくから「マキ」と言われます。ひと噛みするだけで肉汁があふれるお肉で、リブロース芯よりサシが多めです。
ヒレ
サーロインの内側にある部位で、腰椎に沿った細長いお肉です。脂身が少なく、甘みを持つ赤身で、牛肉の中でも最も柔らかいお肉です。牛肉の女王ともいわれます。
サーロインは牛肉の王様、その王様の内側に女王のヒレです。
「フィレ」ということもありますが、フランス語のフィレが「ヒレ」に変化しました。
シャトーブリアン
牛肉の最高峰とも言える部位、シャトーブリアン。なんとこの部位はヒレの中心部分に位置します。幻の部位とも言われます。
腿(もも)のあたりの部位

ランプ
サーロインの後方、腰からお尻につながる部位です。うまみがあり、サシがありますがあっさりとした脂です。
イチボ
お尻の臀部(でんぶ)にあたるお肉です。お尻なので柔らかく、かつ味はしっかりしていて、噛むほどに深みのある味が出ます。
ウチモモ
後ろ脚の付け根の内側がウチモモです。脂身の少ない部分なので、牛肉の中でもヘルシーな部位です。また脂肪分が少ないので噛み応えがあります。
枕(シキンボ)
後ろ脚、外側腿肉(ソトモモ)の内側(骨側)にあるお肉です。少なめですが程よくシサが入り、味わいも楽しめます。
ナカニク
ソトモモ肉の中での外側のお肉です。イチボと接しています。脂が少なく、大部分が赤身です。濃厚で肉の甘みを味わえます。
ハバキ
これもソトモモの1つです。大腿骨を覆っています。筋があるのですが、ゼラチンもあり、舌触りが滑らかなのが特徴です。
トモサンカク
後ろ脚の付け根にある三角形をした部位です。赤身の肉汁とサシの甘みの2つが味わえる部位です。
シンシン
シンタマ(トモサンカク・カメノコなどが合わさった丸い部分)の中心でウチモモの下にあたります。弾力があり、かつ滑らかなのが特徴です。味に癖がありません。
カメノコ
シンシンの外側の部位です。少し硬いので噛み応えがあります。サシはほとんどなく、噛むたびに旨味を感じることができます。
テール
しっぽのことです。焼肉にはしません。コラーゲンが多くスープとして煮込みます。
胸から腹にかけての部位

タテバラ
肋骨の周りのお肉で、体の前寄りで外側のお肉です。バラ肉の「バラ」とは「あばら骨」をあらわします。呼吸する時に動くので、脂肪がたくさんある部位です。皆さんもお好きだと思う「カルビ」として焼肉屋さんなどでは出されることが多い部位でもあります。
ササニク(ササミ)
タテバラが前寄りだったのに対してこのササニクは後ろ脚寄り(お腹側)のバラ肉です。全体的にサシが入っていますがあまりくどくは感じません。この部位は「上カルビ」として出しているお店が多いです。
三角バラ
第1~6番目の肋骨の周りにあるお肉です。サシも多く、旨みも多いので特上カルビとして出されることが多いです。
インサイドスカート
肋骨の内側で、ハラミに接する長くて薄い部位です。柔らかくて、コクがあり、脂の甘みも感じることができます。ハラミと隣接しているだけあって味や食感も似ています。
カイノミ
こちらも肋骨の内側なのですが、ヒレに近い後ろ脚寄りです。味もヒレに近いのでヒレやバラ肉の柔らかさとおいしさとを掛け合わせたような部位です。
ゲタ
あばらの骨の骨との間にある部分をいいます。「中落ち」とも言われるこの部位は脂の甘みや噛み応えがあるのが特徴です。
胸のあたりの内臓

ハツ
心臓です。見た目はレバーのようですがコリコリした食感です。
ハラミ
「インサイドスカート」接するハラミは横隔膜のことです。柔らかくて味が濃いのが特徴です。
シビレ
すい臓です。クリーミーでフォアグラのような味わいです。
胃袋や肝臓

ミノ
牛には4つの胃袋があります。そのうちの1つ目の胃(第一胃)の筋柱ことです。肉質は硬く、噛み応えがあります。また淡白な味をしています。
ハチノス
2番目の胃(第二胃)です。繊毛がハチの巣のような形に並んでいるのでこのように呼ばれています。コラーゲンが多く、噛み応えがある部位です。
センマイ
第一胃、二胃ときたので次は3番目の胃です。低脂肪、低カロリーの部位でかつ、鉄分、亜鉛、コラーゲンを多く含ます。
ギアラ(赤センマイ)
赤センマイともいわれるこの部位は4つ目の胃です。赤センマイともいわれるとおり、少し赤みがかっています。しっかりした噛み応えと、他の3つの胃と比べると程よく脂肪もあります。
ヤン
第二胃のハチノスと第三胃のセンマイの間にあるつなぎ目のところです。コリコリとした食感はまるでアワビでも食べているかのようです。
レバー
肝臓です。ふわざらっとした食感が苦手な方も多いかと思います。よく「貧血の人などが食べるといい」と言われますが、鉄分や葉酸を多く含んでいるからです。
●下腹部あたりの内臓

マルチョウとシマチョウ
マルチョウは小腸です。小腸なので筒状なのですが、調理の際にその筒を割かずに使います。だから丸くてコロコロしているのでマルチョウと言われています。大腸(シマチョウ)より脂がのっています。
シマチョウは大腸です。マルチョウは筒状のままでしたが、シマチョウは切り裂きます。表面が縞状に見えるのでこの名がつけられました。臭みがあるので下処理が大切です。マルチョウよりも分厚いのでよりしっかりした噛み応えがあります。
テッポウ
直腸のことです。切り開くと拳銃のような形になります。この部位も噛み応えがありますが、脂が少ないのでさっぱりしています。
コブクロ
牝牛の子宮です。タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなどがたくさんあります。コリコリした歯ごたえで、淡白な味をしています。
マメ
腎臓です。ブドウの房のようで豆がたくさんくっついているようだからこの名がつけられました。ヨーロッパではパイに入れることもあります。また独特な臭みがあります。
最後に・・・和牛・WAGYU
みなさんは「和牛」と聞いてどんなイメージを浮かべますか?日本産の高級な牛肉といったイメージが大きいと思います。でも世界では少し違ってきています。
「世界では」ということは「和牛」という言葉が独り歩きして違う意味にとらえられているの?とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんがそうではありません。
実は今、日本産でない和牛がオーストラリアを中心に作られ、世界で販売されているのです。
オーストラリア産なら「オージービーフ」じゃないの?産地偽装?
と感じる方、それも違うのです。オーストラリア産の和牛なのです。実は1990年代、その頃まだ規制が緩かったこともあり、日本の畜産業者がオーストラリアに和牛の子牛や受精卵、精子などを輸出したのです。
その後日本ではBSEなどが原因で和牛の輸出が制限される中、オーストラリア産の和牛(WAGYU)が世界に広まっていったといいます。
(悲しいことですが)私たち日本人もオーストラリア産の和牛(WAGYU)を(逆)輸入するようになるかもしれませんね。
(と言っても「日本産の和牛」も餌は輸入しているかもしれませんが・・・)