比喩(ひゆ)とはどんなものか知っていますか?砕けた言葉でいうと「物の例え」で、ある物事を別の物事で例えることです。この記事では、面白い日本語の比喩表現を8つ紹介します。「僕の妹はよく食べる。」という文章を「僕の妹は大食いチャンピオンのようによく食べる。」とするのが比喩表現です。
この記事では以下の3ジャンルから面白い日本語の比喩表現を紹介します。
・SNS
・小説家・伊坂幸太郎
・歌詞
「物の例え」が上手な人は、表現を豊かにすることができるので、話し上手です。お笑いでも例えツッコミが上手で人気な芸人もいますよね。この記事で、比喩がもたらす想像力や表現力を楽しんでください。
目次
比喩とは

比喩とは、冒頭でお伝えした通り、物の例えです。例えに用いるものは相手がよく知っているものにすることがポイントです。例えが伝わりにくくては意味がありません。例えば相手が野球好きであれば、野球用語や野球選手で例えると伝わりやすいのです。
面白い日本語の比喩:SNS

寝不足で頑張ると
寝不足の仕組みに一石を投じる投稿です。寝不足でも一度は頑張れてしまうのは、寝不足のダメージが「寝不足.zip」に圧縮されて、表面消えたように感じるだけだからです。その後、突然ZIPファイルが解凍され、ダメージが展開されてしまいます。
この記事では、寝不足の疲れをパソコンのファイルに例えています。頭痛.jpgは画像ファイルで耳鳴り.mp3は音声ファイルと、例えが使い分けられているところが面白いですね。
言い寄る男性の前世
すぐに絡みたがる男の前世を、パスタにたとえてバッサリと斬っています。「パスタ“とか”だったの?」という言い回しが、男のことを雑に扱っている上に皮肉が効いていて楽しいです。人間ではなく食べ物に例えられてしまう点からも、絡みたがる男性が鬱陶しがられているのがよく伝わります。
僧侶とは
アイドルとは、「偶像」という意味を持つ単語です。仏教は仏像を拝む偶像崇拝の側面があり、この例えはリアルさが際立っています。まずステージ(本堂)中央にセンターの如来がいて、周りをメンバーの菩薩(ぼさつ)が取り囲みます。
そして観客席からステージに向かって念仏を唱えるのがトップヲタの僧侶。僧侶に続いてステージに声援を送っているのがヲタク衆生(しゅじょう)です。
衆生とは命あるもの全てを意味する言葉です。この投稿は、僧侶の立ち位置を分かりやすくて面白く例えられています。最後に「僕は。」とつけることで「あくまで個人の見解です。」と示しているのも見逃せません。
僧侶はトップオタなので衆生の先頭に座っているのですね。
面白い日本語の比喩:小説家・伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の作品は、趣向を凝らした比喩が散りばめられている点が特徴の1つです。ここでは3つ取り上げます。
たぶん絵というのは、紙に殴りつけた祈りだよ。
出典 ラッシュライフ
絵は、絵の具を使って紙に情景などを描写する芸術の一つです。この比喩は「絵の正体は何なのか」ということを見事に分析し、言い当てている比喩表現です。絵とは、殴りつけるほどの激しい感情を持った祈りであるとしています。
この会話の直前には「本物の画家が描く絵は祈りにも似ている。」というセリフがあります。祈りの無い絵を描く画家は本物ではないのかもしれません。
絵は祈りだという比喩表現は、とても写実的で分かりやすいですね。
いいか、距離感なんだよ、人生は。
出典 残り全部バケーション
「頼むぜ。車間距離ちゃんと取っておけよ。」に続くセリフです。もちろん、衝突事故を防ぐために車間距離を取ることは大切です。そこに人生観にまで踏み込んでいます。
例えば人付き合いでは近づきすぎると敬遠されるかもしれません。仕事と家庭のバランスを取るためには、仕事にのめりこみ過ぎない方が良いのかもしれません。
何気ない会話に、考えさせられる一言が放り込まれていて面白いです。
誤りと嘘に大した違いはない。微妙な嘘は、ほとんど誤りに近い。
出典 死神の精度
「嘘とは誤りである。」とまでは言い切らないものの、ほとんど誤りだと断じている比喩表現です。嘘とは「事実をごまかすこと」です。誤りとは「事実が間違いであること」を表します。
自分の「間違い」を「嘘」で表現してしまう人がいますが、ごまかせないのであれば間違いになります。
嘘は上手に使いたいものですね。
面白い日本語の比喩:歌詞

麦わらの帽子の君が揺れたマリーゴールドに似てる
あいみょんの「マリーゴールド」という曲のサビです。麦わら帽子を被った恋人の姿をマリーゴールドに例えています。この曲は恋人との思い出と今の二人を歌う曲です。そのため「あの頃」、つまり過去の情景が登場します。恋人が可憐なマリーゴールドに見えた「あの頃」を思い浮かべる情景豊なフレーズです。
爽やかさと切なさが同居する名曲です。
忘れた物を取りに帰るように古びた思い出の埃(ほこり)を払う
米津玄師の「Lemon」の一節です。この歌は、愛する人の死を「先立たれた人」と「先だった人」の2人の視点で歌っています。掲題のフレーズは、愛すると人の記憶を辿る行為を示しています。いつもは頭に浮かぶことの無い記憶(忘れ物)を、自分の心の中に見つけに行く様子が印象的です。
紹介したのは1番の歌詞です。2番は亡くなった人の言葉が歌われています。
さいごに
面白い日本語の比喩表現を紹介しました。笑えるものから考えさせられるものまで様々な比喩があります。比喩とは言葉の掛け合わせです。面白い比喩を考えつく可能性は無限にあるといえます。
今まで素通りしていた文章を「つまりどういうことを言っているのか?」と掘り下げてみると、新しい発見ができます。ぜひ、例え言葉の面白さを立ち止まって味わってはいかがでしょうか?