みなさんベーグルをご存じでしょうか?ベーグルと言えば「真ん中に穴の開いたドーナツ型のパン」といったイメージを持っている方も多いと思います。
また、ベーグルというとニューヨークを思い浮かべる方も多いかと思いますが、実はニューヨーク発祥ではありません。なんとユダヤ人由来の食べ物なのです。さらにベーグルはヘルシーな食べ物というイメージを持った方も多いですが、この理由は原料にあります。
今回はベーグルについての雑学をご紹介します。ベーグルの由来・歴史から始まりヘルシーと言われる由縁。ドーナツやパンとの違い。最後に食べ方や各国で進化したベーグルについてお話しします。
目次
ベーグルとは
はじめにベーグルとはどんな食べ物かをお伝えします。ベーグルは小麦粉で作ったパンに似た食べ物です。真ん中に穴が開いたドーナツ状、表面はつるつるしていて、中側はもちもちした独特な食感をしています。大きな特徴としては牛乳・卵・バターを使わないところです。だから乳製品や鶏卵のアレルギーを持った方でも食べることができます。
乳製品や卵を使ってないからヘルシーと言われます。
ベーグルの由来(歴史・発祥の地)~ユダヤ人
ベーグルの由来(発祥の地)にはいろんな説があります。でもどれもユダヤ人に関係し、ポーランドが発祥と言って間違いなさそうです。
ベーグルとユダヤ人
最も有力とされるのがオブヴァジェーネック(Obwarzanek)というドーナツ型をしたパンが元ではないかという説です。このパン、14世紀の記録によると、ポーランドにあるユダヤ人コミュニティーで食べられていると書かれています。
実はベーグルはユダヤ教を信じるユダヤ人にとってはパンに代わる大切な食べ物なのです。というのもユダヤ教には「親に当たる食べ物と、子に当たる食べ物を一緒に食べてはならない」という決まりがあります。だから牛肉を食べる時は(牛乳やバターを使う)パンを一緒に食べることはできないのです。その点ベーグルには乳製品を一切使わないので牛肉と一緒に食べることができます。
もしかしたらベーグルはユダヤ教から生まれた食べ物かもしれませんね。
ベーグルとユダヤ人排斥運動
ベーグルと共にヨーロッパで暮らしていたユダヤ人。しかしヨーロッパを出なければならなくなる風潮に追いやられます。1880年代に東ヨーロッパで高まったユダヤ人迫害や、1928年に起きた世界大恐慌。さらに1939年より始まった第二次世界大戦での起きたユダヤ人を排斥する運動などが起きます。これによりユダヤ人はヨーロッパにいづらくなります。
ヨーロッパではユダヤ人が経営していたベーグル屋は次々と消えていきます。さらに自分がユダヤ人であることを隠すためベーグルを食べなくなっていきました。
迫害を受け、ヨーロッパで生活しづらくなったユダヤ人たちは大西洋を渡ります。そしてたどり着いたアメリカ・ニューヨークに移り住みます。現在では、ニューヨークがベーグルの中心地ともなりました。
日本では1982年にジャーナリストのライル・B・フォックスがベーグル店を始めます。これが日本で初めて販売されたベーグルです。
ベーグルの作り方と特徴
ここからはベーグルの作り方をご紹介します。
生地作り・整形・発酵
先ほども書きましたが、ベーグルは牛乳やバター、さらに卵も使いません。小麦粉に水と塩、砂糖、ベーキングパウダーを加えて生地を練り、のばします。そしてのばした生地の両端をつなげ、輪っかにし、発酵させるのです。
ケトリング
発酵後、次に焼くのではなくなんと茹でるのです(茹でることをケトリングと言います)。このケトリングがベーグルの一番の特徴です。茹でると生地が膨張します。茹でることでベーグルの特徴的なもっちりとした弾力とずっしりした食感が生まれるのです。
ケトリングする時のお湯はぐらぐら煮立たせません。沸騰する直前、お湯の液面がゆらゆら揺らぐくらいの温度で茹でます。またお湯1リットルに対してモラセスを大さじ1杯加えます。モラセスを入れることで、焼いた後にベーグル特有の艶のある焼き色が生まれるのです。
モラセスとは
「モラセス」を日本語に直すと「廃糖蜜」と言います。サトウキビや甜菜(てんさい)などから砂糖を作る時に出てくる不純物です。黒褐色の液体で、ドロッとしています。また、ミネラル分を多く含んでいます。
茹で時間は1分くらい。お湯に浮くのでひっくり返しながら茹でます。
しっかり発酵していないと浮いてこないのでご注意を。
焼く工程
ケトリングが終わったら水気をしっかり切り、最後の焼く工程です。茹で終わったベーグルは冷めないうちになるべく早く、余熱で温めたオーブンへ入れます。冷めてしまうとシワができることがあるからです。焼きあがったベーグルは蒸らさず、すぐに網の上に取り上げます。
発酵させすぎたり茹で時間を長くしたりしてもシワができる原因になります。
ベーグルとドーナツやパンの違い
ここまで読んでくださった方はわかると思いますが、ベーグルとドーナツやパンとの違いをまとめました。
ドーナツとの違い
はじめにベーグルとよく似た形をしているドーナツとの違いをご紹介します。
材料
ドーナツを作る時には卵やバターも使います。しかしベーグルを作る時には卵やバターを使いません。小麦粉、塩、砂糖、そしてモラセスを使って作ります。
作り方
ドーナツは油で揚げますが、ベーグルは茹でた後オーブンで焼きます。
食感
ドーナツは固いもの、サクサクしたもの、ふんわりしたものがあります。ベーグルは中がもっちり、表面がパンより少し固めです。
パンとの違い
続いてパンとベーグルの違いをご紹介します。
材料
パンを作る時はバター、牛乳といった乳製品や卵を使います。しかしベーグルには乳製品や卵を使いません。
作り方
パンの場合は発酵した生地をそのままオーブンで焼きます。しかし、ベーグルは発酵した生地を一度茹で(ケトリング)、その後オーブンで焼きます。
ベーグルの食べ方
最後にベーグルの食べ方を簡単にご紹介します。食べ方はパンとほぼ同じです。でもそのままではなく、ハンバーガーで使うパン(バンズ)のように、ベーグルを横から水平に2つに切ってから以下のように調理します。
- トーストにしてバターやジャムを塗る。
サンドウィッチのように間にベーコン、スモークサーモン、アボカド、クリームチーズ、エビ、スクランブルエッグ、レタスなどの具を挟んだベーグルサンドにする。
フレンチトーストのように卵を付けて焼く。
シュガーバターを使いラスクにする。
といった食べ方をします。
想像しただけでよだれが出てくるのは私だけでしょうか?
最後に~変化したベーグル
いかがでしたか?ベーグルを食べたくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回のベーグルはユダヤ人が食べていたようなベーグルについてご紹介しました。実は現在、世界各地のベーグルはユダヤ人の作っていたものと少し変わってきています。
例えばカナダのモントリオールのベーグルには生地を作る時に卵を加えます。塩は入れせん。また、生地のケトリングの際にモラセスを入れず、その代わりに蜂蜜を加えます。
また、ニューヨークのベーグルも変わり始めています。モラセスの代わりにモルトパウダーを使います。モルトパウダーとは大麦からとれる麦芽糖のことです。
もちろんユダヤ人が食べるベーグルもおいしいのですが、ニューヨークやモントリオールのベーグル、さらにドーナツのように甘いシロップが塗られたものなども売られています。
私の住む田舎の住宅地にも数週間前、ベーグル店ができましたが、みなさんのお宅の近所にもベーグル店があると思います。食べたことがない方はぜひ一度食べて異食文化を味わってみてください。