みなさん、「お正月の料理」というと何を思い浮かべますか?
おせち料理、お餅、お雑煮でしょうか?「ところ変われば品変わる」ということで、今回はお正月料理の地域による違いをお伝えしよう・・・と思ったのですが、
近年、おせち料理を家庭で作られるお宅も減りつつあり、スーパーやデパート、インターネットなどで注文されるお宅も増えてきています。注文したおせち料理には各地域の特徴はありません。
時代の流れですよね
そこで今回はお雑煮による地域による特徴をご紹介することにします。(まさかお雑煮をインターネットで注文される方はいないと思います。)各地域で食べ継がれているお雑煮はそれぞれ地域により様々です。今回は「へ~こんな食材を入れるんだ」とまねしたくなるものから、「えっ?」と驚きのお雑煮までご紹介します。
お雑煮とは・・・室町時代・儀礼的な食べ物
まずはお雑煮とはもともとどんな食べ物だったのかといった歴史についてご紹介します。
お雑煮と言えばところ変われど、必ず入っているのがお餅ですよね。そんなお餅は平安時代から貴族の間ではハレの日などに食べられていました。そして鏡餅にするなど、現在でも神聖な食べ物としての一面もあります。お餅が入ったお雑煮も昔から特別なものでした。
元々お雑煮は室町時代、女房詞(にょうぼうことば・天皇陛下が暮らす御所に仕える女性たちの言葉)で「烹雑(ぼうぞう)」と呼ばれていました。
この烹雑は室町時代の武家社会で儀礼化されます。儀礼的な宴で行われる三献(さんこん・酒の肴のお膳を1膳ずつ3膳に分けて出される儀式)で食べるものとなったのです。三献のうちの最初のお膳(初献・しょこん)にこのお雑煮が出されるようになりました。
この三献で出されていたお雑煮がいつしか庶民へと伝わっていきました。
「昔は貴族しか飾らなかった雛人形」と同じようにお雑煮も庶民へと伝わっていきました
庶民がお正月にお餅が食べられるようになったのは江戸時代になってからです。江戸時代になると、賃搗(ちんづき)餅屋という餅つき職人が現れ、お餅をついて町や村を回りました。
賃搗餅屋はまさに[餅は餅屋]です。
お笑い芸人のクールポコのように杵や臼、蒸し器などを持って回っていました。
だからお雑煮を庶民が食べるようになったのも江戸時代以降です。
各地域におけるお雑煮の違い
江戸時代以降、全国に広まったお雑煮ですが、地域によりお正月頃取れるモノや縁起物が入り、一言で「お雑煮」と言っても様々です。ここからはそんな全国各地のお雑煮の特徴をご紹介します。
汁の違い
最初によく言われる「汁の違い」をご紹介します。お雑煮のお汁には大きく分けて3種類あります。その中でも白味噌仕立てと澄まし汁仕立ての違いは有名ですよね。
白味噌仕立てのお雑煮は関西地方と徳島県、香川県、福井県、長野県の一部、三重県の一部などで食べられます。そのほか多くのところでは澄まし汁を使います。
澄まし汁仕立てのお雑煮であっても昆布で出汁をとる地域もあれば鰹節で出汁をとる地域、その他の魚を使う地域など、出汁の取り方は様々です。
さらに驚かれる方も多いかと思いますが、鳥取県や島根県の出雲地方、新潟県下越地方の一部や佐渡ヶ島では小豆の入った小豆汁をお雑煮に使います。
お餅の違い
お餅は大きく分けて5種類に分けられます。
まず、丸餅と角餅の違いです。これは東西で分かれています。福井県と石川県の間あたりから岐阜県の関ケ原のあたりを通り三重県の南部と北部を分けたような線で、西側が丸餅、東側が角餅です。
その角餅、丸餅を焼餅にするか煮込むかで全部で4種類になります。
そして最後の1種類ですが、地元以外の方は驚くと思います。それは香川県なのですがノーマルなお餅ではなく、なんとあんこが入ったお餅を白味噌仕立てのお雑煮に入れます。
驚きですよね
各地域の特徴的な具材
ここからは各地域の特徴あるお雑煮の具材や食べ方についてご紹介します。
「こんなすごいものを…!」とか「へ~そうなんだぁ」などと思いながら見ていってください。
・青森県八戸地域:捕鯨が盛んな地域なのでくじらが入ります。
・福島県:地元でとれるもの、キクラゲや糸こんにゃく、里芋を入れます。
ちょっとブレイク~里芋は子孫繁栄を願って
お雑煮に里芋を入れる地域は福島県のみならず日本各地にあります。お雑煮どころかお節料理に里芋・・入っている家庭も多いと思います。
「お節料理に入るのなら縁起物?」とお思いの方、That’s right!その通りです。里芋は子孫繁栄を願って入れられます。この理由は里芋のでき方(なり方)あります。
里芋は1つの親芋の周りに子芋ができて、さらにその周りに孫芋ができるといったなり方をします。1つの親(芋)の周りに子(芋)、そしてその周りに孫(芋)って、家族みたいですよね。だから里芋には子孫繁栄の願いが込められるのです。
・岩手県三陸海岸地域:焼角餅が入るが、お餅を食べる時は器から出して別皿のクルミダレにつけて食べます。
・宮城県:出汁をとるのにハゼを使い、出汁をとったそのハゼを焼いて具にします。
・山形県:わらびやこんにゃく、厚揚げ、油揚げなどを入れます。
・千葉県房総半島南部地域と九十九里地域:「一年間幅を利かせられるように」と房洲産の「はば海苔」を入れます。
・東京都:ナルトや鶏肉が入ります。
・新潟県:鮭やイクラが入ります。
・岐阜県高山市や長野県:富山で獲れた「氷見の寒ブリ」が入ります。
昔、富山県から高山市を通って長野県へと向かう道を塩ブリを運ぶことから「ブリ街道」と呼ばれていました。これらの地域のお正月料理に氷見の寒ブリは欠かせない食材です。
・福井県:「株を上げる」という意味でカブを入れます。
・愛知県の尾張地域:「名(菜)を持ち(餅)上げる」という意味で餅菜という伝統野菜を入れます。
・京都府:京都の伝統野菜である金時人参が入れられます。
・奈良県:焼丸餅が入るのですが、お餅を食べる時は器から出して別皿の黄な粉につけて食べます。
・兵庫県南部:明石海峡で獲れるアナゴを白焼きにして入れます。
・岡山県:この地域で藻貝(モガイ)と呼ばれる二枚貝を入れます。
・広島県:ブリやアナゴの白焼きが入ります。
・愛媛県の大洲地域:鮎の産地であるこの地域では焼干しした鮎で出汁をとります。この出汁をとった鮎を味付けしてお雑煮の具にもします。
・福岡県の博多地域:焼アゴで出汁をとります。塩ブリが入ります。
・長崎県の島原地域:具だくさんでレンコン、ゴボウ、アナゴ、凍り豆腐、卵焼きなどが入ります。
熊本県の北部地域:鶏肉、レンコン、株、里芋そして納豆が入ります。
鹿児島県の薩摩地域:里芋やエビが入ります。
エビ、豪華ですよね
鹿児島県の大隅半島や奄美大島地域:塩豚や鳴門が入ります。塩豚とは3,4日塩を染み込ませた豚肉のことです。
お餅を入れないお雑煮
お雑煮にはいろんな具材が入りますが、お餅は不可欠ですよね。ここまでいろんな地域のお雑煮をご紹介しましたが、お餅が入ること前提でお伝えしてきました。しかし、地域によってはお餅を入れないお雑煮を食べるところがあるのです。
有名なのが徳島県三次市の祖谷(いや)という地域の「打ちちがえ雑煮」です。この地域は祖谷渓谷があるようなところで、稲作にはむかない地域でした。
昔、神様には自分たちが作ったもの以外をお供えしてはいけないと言われていて、稲作ができないこの地域ではお餅が作れません。だからお餅の代わりに大豆で作った豆腐(岩豆腐)を里芋とともにお雑煮に入れます。
これらをお椀に盛り付けた時、十字に重なった2つの岩豆腐が、平家が刀を交えた姿と重なり「打ちちがえ雑煮」と言われるようになったといわれています。
さいごに・・・
私は小さい頃お雑煮は苦手でした。どろ~んと煮込んだ角餅がそれほどおいしく感じませんでした。だからお雑煮は祖谷地域とは違う意味でお餅を入れなかったのです。ほうれん草とナルトが入ったお澄ましです。
お雑煮でその人のルーツが分かるとも言います。私の母親は静岡の山奥の出身ですが祖母は東京の出、だからナルトが入った東京風?でも鶏肉は入らないし・・・皆さんも自分の家のお雑煮のルーツを一度探ってみてください。