あなたは関西にお住まいですか?それとも関東にお住いですか?関西の人が関東に(また逆に関東の人が関西に)行くと「えっ、この食べ物って?」といったように食べ物の違いに驚くことがあると思います。今回はそんな関西と関東の食文化の違いをお伝えします。
うどんやそばの話、出汁や味付け、すき焼きやうなぎの調理法、カレーや肉じゃがのお肉、食パンの厚さ、お餅、稲荷寿司、おにぎり、さらに端午の節句に食べるものまで。関西と関東での食分化がそれぞれどのようにできてきたかをご紹介します。
これを読めば、これまでにカルチャーショックを受けたことがある方、納得!受けたことがない人も狭い日本の異文化について誰かに話したくなること間違いなしです。また、関西と関東の間の中部地方の方にとっては「食文化」から「関西よりか、関東よりか」がわかりますよ・・・。
目次
うどん・そば
関西・関東ででは麺の文化も違います。
- 西・うどんを好む文化。
- 東・そばを好む文化。
うどんは中国大陸により近い福岡県の博多が発祥と言われています。小麦は水はけがいい豊かな土地で、かつ暖かな気候を好みます。そんなうどんに対してそばはやせた土地でも育てることができ、また寒暖差にも強い作物です。だから関西ではうどん文化が発達し、関東ではそば文化が発達しました。
また「人格(気質)にもよる」という説もあります。せっかちな江戸っ子はさっと茹でて食べられるそばを好んだとも言われます。
きつねとたぬき
うどんとそばというに油揚げなどが入った「きつね」や「たぬき」という表現がありますよね。これにも関東と関西、関西の中でも京都と大阪でも違いがあります。
まずは「きつね」。
- 関東・油揚げが乗ったそばやうどん。
- 大阪・油揚げが乗ったうどん。
- 京都・京都・細麺のうどんで、短冊切りした油揚げと九条ねぎが入ったもの。
また、「たぬき」は・・・。
- 関東・天かす入りのそばやうどん。
- 大阪・油揚げが乗ったそば。
- 京都・京都のきつねうどんをあんかけにしたうどん。
関西地方では天かすが入ったうどん(関東でいうたぬきうどん)を「はいから」と言います。
醤油(薄口・濃口)
醤油の薄口・濃口も関西地方は違います。
- 関西・薄口醬油
- 関西以外・濃口醤油
濃口醤油は関西地方以外のほとんどの地域で使われていますが、関東地方から広まりました。土壌の泥臭さや魚の生臭さなどを消すために関東地方で醤油が使われ始めたと言われています。
関西地方では(京都の割烹料理でもわかるように)食材の色合いを鮮やかに見せるために薄口醤油が使われます。
ちなみに薄口醬油の方が塩分は高いといった話もあります。しかし現在減塩醤油なども販売されているので一概には比較できません。
出汁(昆布だし・かつおだし)
- 西・昆布だし
- 東・かつおだし
関西地方は昆布、関東地方はかつおで出汁を取る文化が根付いた理由には諸説あり、一説には水の硬度によるものというものがあります。
関西地方の水は比較的硬度が低い軟水で、関東地方は関西に比べて硬度が高い硬水です。昆布の出汁は軟水に出やすいのですが、硬水には向いていないからなのです。だから関東では昆布だしが浸透しなかったという説があります。
卵焼き(塩味・砂糖味)
- 西・塩気が利いた出汁巻き卵
- 東・甘みがある卵焼き
関西の卵焼きは昆布だしを加えた出汁巻き卵で、塩で味を引き立てて作ります。また、醤油を使うこともよくあります。
関東は江戸前寿司の「ぎょく(玉)」から派生したと言われています。玉とは卵に魚介類のすり身を混ぜ、砂糖やみりんで味付けして焼いた物のことです。
すき焼き~もともと関西と関東では別物
- 西・まず、牛脂でお肉を焼き、砂糖、醤油や酒で味付けします。その後、そのほかの具材を鍋の中に入れる。
- 東・鍋に(砂糖、出汁、みりん、しょうゆなどで作った)割り下を入れ、肉と野菜を一緒に煮る。
関西には昔から「すき焼き」という料理はありましたが、関東にはなく、その代わりに「牛鍋」がありました。この牛鍋を出すお店が関東大震災の時、姿を消します。
その後、関東に「すき焼き屋」が進出。それまでの牛鍋と混同され関東地方のすき焼きが現在のようになったと言われています。
北海道ではすき焼きに豚肉を使うお宅が多いようです。
うなぎのさばき方・焼き方
近年、高くて手が届きにくくなったうなぎのさばき方・焼き方にも違いがあります。
さばき方
- 西・頭を落とさずお腹に包丁を入れる腹開き
- 東・背中に包丁を入れる背開き(頭は切り落とします)。
焼き方
- 西・蒸すことはしません。さばいたうなぎをそのまま串を指して焼きます。
- 東・まず、白焼きにしたうなぎを蒸して脂を落とします。その後焼き上げます。
カレーのお肉(牛肉・豚肉)
- 西・牛肉
- 東・豚肉
関西地方には「近江牛」「神戸牛」「松阪牛」など多くのブランド牛の生産地があり、「肉と言えば牛肉」という考えが生まれたとも言われています。だからカレーのみならず、肉じゃがも関西地方では牛肉、関東地方では豚肉を使います。
山口県や山陰地方、栃木県では鶏肉を使ったチキンカレーにすることが多いようです。
パンの厚さ(5枚切り・6枚切り)
- 西・5枚切りが主流
- 東・6枚切りが主流
詳しい理由はわからないのですが、関西の人にとって「毎日1枚ずつ食べると5日分になる」というのが合っていたのではないか(??)とも言われています。
私は岐阜県出身なのですが、昔は5枚切り食パンを店頭で見かけることはありませんでした。
お餅の形(丸餅・角餅)
- 西・丸餅
- 東・角餅
近年、「サトウの切り餅」などがスーパーで売り出され、西日本でも角餅を食べられ始めていますが、以前は西日本では丸餅でした。東日本で角餅文化になったのは江戸の人口が多かったことに起因します。
もともとは江戸も丸餅だったといいます。しかし人口が増えると、その分多くのお餅を丸めなくてはならなくなりました。手間と時間を減らすために、(平らに伸ばした)「のし餅」を作り、これを切った角餅を食べるようになったようです。
また、お雑煮に使うお餅、関西ではお餅を雑煮に煮ますが、関東では焼いたお餅(焼き餅)を入れます。
稲荷寿司の形
- 西・三角形
- 東・俵型(長方形)
稲荷寿司の形の理由ははっきりしていません。一説には関西地方は「狐(その物)や狐の耳に見立てた」と言われています。また、関東地方の俵型は「米俵に見立てた」と言います。
また、関西地方ではゴボウ、ニンジン、シイタケなどを煮た具も一緒に加えた五目稲荷を作ります。
おにぎりの形・海苔(俵型・三角形、味付け海苔・焼き海苔)
西・俵型
東・三角形
皆さんのおにぎりは俵型?それとも三角形?これは「完全に白黒はっきり分かれる」というのではないのですが、関西地方では俵型に握った物が多く、関東では三角形のおにぎりが多いです。
稲荷寿司と形が反対ですよね?
また、おにぎりと言えば海苔を巻きますが、その海苔にも違いがあります。
- 西・味付け海苔
- 東・焼き海苔
西日本で味付け海苔のおにぎりが多いのは明治天皇に起因するという説があります。1869(明治2)年に明治天皇が京都へ行かれた際、土産として味付け海苔が開発させました。これが京都から関西全域に広まり、関西地方では海苔の定番となったといいます。そからおにぎりにも味付け海苔が使われるようになりました。
関西のコンビニでおにぎりを買った時、味付け海苔が使われていて、カルチャーショックを受けました。
端午の節句(ちまき・柏餅)
- 西・ちまき(粽)
- 東・柏餅
端午の節句は中国にから伝わった五節句の1つで、ちまきを食べる風習も「端午の節句」と共に伝わりました。当時の都が奈良にあったことから、関西から各地へと広まっていきました。
また、柏餅を食べる風習は江戸時代に始まります。柏の木は新たな芽が出るまで葉っぱが落ちないところから血筋を絶やさないという武家社会の縁起物として食べられ始めました。
なぜ西日本に柏餅が広まらなかったかというと柏の木の特性にあります。柏の木は西日本であまり育ちにくいのです。そのため、江戸時代以前から食べられていたちまき文化が残っているのです。
最後に
いかがでしたでしょうか?あなたの食文化は「関西寄り」でしたか?「関東寄り」でしたか?いろいろ紹介しましたが、関東と関西の食文化が違いには江戸時代が大きく関係しています。江戸に幕府ができたことにより(それまでの京都の文化とは違った)江戸の風土にあった文化が、江戸を中心として発信され、広まっていきました。
また、「天下の台所・大阪」という言葉を聞いたことがあると思います。大阪が物流の拠点となったことにも関西が江戸と並ぶ食文化の拠点となった要因でしょう。
今回は関西と関東という分け方をしましたが、日本各地、様々な食文化があります。みなさんも異食文化を味わいに旅してみてください。