みなさん、ノーベル賞はご存知かと思います。優れた研究や功績を挙げた人や団体に贈られる賞ですよね。今回はノーベル賞をパロディ化した「イグノーベル賞」についての雑学です。
パロディなのでノーベル賞では考えられないような面白い事柄が多く受賞されています。例えばカラオケ、(苦痛に耐えるなど)人の心を寛容にするので「平和賞」。また「ワニにヘリウムガスを吸わせる研究」などで日本人が受賞しています。
しかも受賞者は一流大学などの研究者らが、真面目に研究を行っています。どれも突拍子もない考え方や発想をした研究、人を笑わせたり考えさせたりするものに贈られます。
今回は「(このような)イグノーベル賞とは」から始まり、「面白い授賞式」「賞金や副賞」「日本人が受賞したいくつかの事柄」を紹介します。
これを読めば、面白いイグノーベル賞に興味を持つこと間違いなし!です。
目次
イグノーベル賞とは?
イグノーベル賞はノーベル賞のパロディとして1991年に始まりました。公式パンフレットにはノーベル賞の創設者ノーベルの親戚、イグネイティアス・ノーベルの遺産で運営されていると書かれています。しかしこれは真っ赤な嘘(ジョーク)です。
イグノーベル賞の語源は「ノーベル(Nobel)賞」に、否定を示す接頭語である「ig」を加えたもの。それと英語の「恥ずべき、不名誉な、不誠実な」を表すignobleをかけ合わせた言葉です。
実際はサイエンスユーモア雑誌「The Annals of Improbable Research(ありそうもない研究年報)」から生まれました。毎年笑いや賞賛、皮肉を込めて10人(又は団体)に贈られます。
面白い授賞式
このような(ある意味)ふざけた賞、授賞式もユニークです。
授賞式への旅費・滞在費な自己負担です。受賞公演には会場にいる聴衆の笑いを取ることが求められるのです。また、(ノーベル賞はスウェーデン王室に敬意を払いますが)イグノーベル賞は(スウェーデン風)ミートボールに敬意を払って行われます。
受賞式
1、紙飛行機
授賞式開始時、聴衆は紙飛行機を作って飛ばします。その紙飛行機を掃除するモップ係もいます。モップ係はなんと、ハーバード大学の物理学者で、2005年に(本物の)ノーベル賞を受賞したロイ・グラウバー氏が毎年行うのです。
2、壇上へ上る時
壇上に登る際も受賞者を馬鹿にしています。1本のロープを掴み、1列でぞろぞろと登場するのです。これは幼稚園児のお散歩を模しています。
3、受賞講演は60秒。制限時間が過ぎると…
受賞公演はたったの60秒です。時間が過ぎると進行役である8歳の少女[Miss Sweetie Poo(ミス・スウィーティー・プー)]が
「Please stop. I’m bored.(もうやめて。私、つまんない)」
と連呼し始めるのです。しかしこの少女をプレゼントで買収(ばいしゅう)すると、話を続けることができるのです。
ミス・スウィーティー・プーのこの茶番劇は1999年より行われています。
賞状や副賞・副賞
賞状、賞金
賞状もイグノーベル賞らしいものです。なんとコピー用紙にプリントされた物。これに選考委員のサインがあるだけなのです。また、賞金も2014年以前はなかったのですが、それ以降、10兆(ジンバブエ・ドル)札1枚となりました。
副賞
副賞は研究に関係したものが贈られます。例えば、日本の国立国際医療センター研究所の山本麻由さん。「牛の排泄物からバニラの香り成分を抽出した研究」での受賞の際は、ケンブリッジ市のアイスクリーム店が「ヤマモトバニラツイスト」というアイスを販売。受賞公演中に聴衆に振る舞われました。
コロナ禍では
コロナ禍となった2020年以降はオンラインで授賞式が行われました。そして賞金、賞状、トロフィーに至るまでPDFファイルで授与されたのです。
これまで日本人が受賞したイグノーベル賞
このイグノーベル賞、ほぼ毎年日本人が(何らかの分野で)受賞しています。そのうち一部を紹介します。
コメディーの王道を科学的に分析して受賞
- 2014年、「床に置かれたバナナの皮を踏んだ時、その摩擦力を計測した研究」で物理学賞。(北里大学の研究グループ)
人の感覚に関する受賞
- 1992年、「足の匂いの原因物質特定」で医学賞。(資生堂研究員)
- 2011年、「緊急時に寝ている人を起こすのに最適な空気中わさび濃度の発見。警報装置の開発」で化学賞。(滋賀歯科大学講師ら)
- 2015年、「キスアレルギー患者のアレルギー反応を弱める研究」で医学賞。(開業医)
娯楽に関する受賞
- 2004年、「カラオケを発明し、他人への苦痛や他人からの苦痛に耐える寛容さを身に付ける手段の提供」で平和賞。(会社経営者)
- 1997年、「一世風靡した『たまごっち』、仮想ペットに数百万人分の労働時間が費やされたこと」に対し経済学賞。(玩具メーカー社長ら)
嫌なことに対抗する受賞
- 2012年、「迷惑なおしゃべりを妨害する装置『スピーチジャマー』の発明」で音響賞。(産業技術総合研究所研究員ら)
- 1999年、「夫のパンツに吹きかけ浮気が発見できるスプレー開発」で化学賞。(探偵所所長)
動物に関する受賞
- 2002年、「犬語翻訳機「バウリンガル」を開発し、犬と人との平和に寄与」で平和賞。(タカラ創業者ら)
- 1995年、「ハトを訓練させ、ピカソとモネの絵の区別させたこと」で心理学賞。(慶應義塾大学研究グループ)
- 2020年、「ワニの唸(うな)り声もヘリウムガスで高くなることの発見」で音響学賞。(京都大学霊長類研究所准教授)
最後に
いかがでしたか?授賞式など、イグノーベル賞主催側のユニークさや、日本人の面白い受賞研究など、イグノーベル賞に興味を持たれたのではないでしょうか?
2015年にイグノーベル賞25周年を記念して、歴代の進行役「ミス・スウィーティー・プー」が集まりました。彼女たちはやはり、お互いの話に「つまんない」と言って止めあったといいます。その際、自分の話を邪魔するミス・スウィーティー・プーに「プレゼント」を贈り、買収しあったかどうかは定かではありません・・・(笑)。