突然ですが「へそで茶を沸かす」という言葉を聞いたことがありますか?もちろん、実際にへそでお茶を沸かすのではありません。「おかしくてしょうがない」「ばかばかしくてしょうがない」ことを、へそで茶を沸かすと言います。大笑いしすぎて腹がよじれることが、湯が沸く様子に似ていることからきています。このように、日本語には面白い表現が沢山あるのです。
この記事では、言い回しやたとえ言葉について使用例と共に6つ紹介します。まず紹介するのは、へそで茶を沸かすと同じく他のものに言い換える表現です。そして、言葉を言い換えることで言葉に含まれる微妙な意図や考えを伝える表現を紹介します。どの言い回しも、簡単に使えるものばかりです。ぜひ、日常生活のコミュニケーションに取り入れてはいかがでしょうか?
目次
面白い日本語:言い回し、たとえ言葉が豊富

日本語には、物事をそのまま表現するのではなく、言い回しやたとえで表現する文化があります。日本語の奥ゆかしさというものです。この言い回しや、 たとえ言葉は、言わば「暗黙の了解」「察し」で成り立つコミュニケーションです。
相手の気持ちを間違いなく察するためには、国語力を高めなければなりません。普段から文章に触れたり辞書を引いたりすることで、国語力を高められます。現代は、ストレートに物事を表現することが多くなってきました。効率化と誤解の排除のためには致し方ないことです。しかし、日本語の言い回しやたとえ言葉はお互いを思いやる日本の文化です。絶えることなく引き継がれていくでしょう。
相手の言葉に隠された本音をくみ取るために国語力を高めましょう
面白い日本語:他のものに例えて言い換える

猫の手も借りたい
忙しくて手が回らないときに使うのが「猫の手も借りたい」です。誰でもいいから手伝ってほしい。なんだったら猫でも構わないと言っています。実際は猫の手は役に立たないので、あくまで例えです。「本当に忙しいんだな」と納得させられる言い回しです。
このメッセージには「あなたに手伝ってほしい」という期待が込められている場合があります。「手伝えることはない?」と聞いてあげるのもよいでしょう。
例:「今、引っ越しの準備をしているけれど、本当に猫の手でも借りたいわ。」
簡単に使えて、大変さが伝わる便利な言い回しですね
揚げ足を取る
「揚げ足を取る」とは、他人の言い間違いや言葉尻をつかまえて皮肉を言ったり、からかったりすることを指します。柔道や相撲で、相手が自分に技をかけるためにあげた足をつかまえて倒すことが語源です。揚げ足を取ることは、主に論争・口げんかの場で使われます。
相手の少しのミスをからかうのは、議論において何の意味も成さない失礼な行動です。公の場ではもちろん、プライベートにおいても揚げ足を取る言動は控えましょう。
例:彼は、いつも相手の揚げ足を取ることばかり言うので嫌われている。
『揚げ足取り』という名詞としても使われる表現です
言わぬが花
「言わぬが花」とは、全てひけらかすと趣が無い、差し障りのあることは黙っていた方がいいという意味の言葉です。何でもかんでも言わないことを美徳として、花の美しさに例えています。全てを話してしまうのではなく、余韻を残す慎ましさを大切にする日本語らしい表現です。
伝えきることが重要な仕事の場で使うことは無いですが、日常生活で角を立てないために使えます。含みを持たせた表現がしたいときに使ってみましょう。
例:「彼には言いたいことは山ほどあるけれど、それは言わぬが花というものだよ。」
能の言葉にある『秘すれば花』が由来と言われています。
面白い日本語:言い換えることで表現の幅を広げる

取り込んでおりまして
「取り込んでおりまして」は、言葉通り「忙しいので」という意味です。これを使って、相手から言われたことを断ることができます。例えば、自分にとって都合の悪い提案や、会いたくない人からのアポイントメントを「今は取り込んでおりまして」とやんわりと断れます。「いつまで取り込んでいるのか」と粘られたら「当分の間ですかね」とでも答えましょう。
また、電話を受けたくない時間には、周りに「取り込み中」と伝えるように依頼するのも有効です。「取り込んでおりまして」は、へりくだりながらお断りするのに便利な表現と言えます。
例:「当分の間取り込んでおりまして、お約束ができかねます。」
相手が引き下がらず納得してくれない場合は、理由を説明しましょう
胸がいっぱいになりました
「胸がいっぱいになりました」は自分の感情があふれそうになったことを表します。「胸がいっぱい」だけでも使用可能です。この言葉は、嬉しいことにも悲しいことにも使えます。「親友の結婚式で、嬉しそうな親友を見て感動しました。」というより「親友の結婚式で、嬉しそうな親友を見て胸がいっぱいになりました。」という方が、喜びの大きさが伝わってきます。
実際に胸がいっぱいになって破裂すると誤解されることはありませんので、感情を表現する言葉の1つとしてぜひ使ってみましょう。
例:「海外で起きている紛争の映像を見て、悲惨さに胸がいっぱいになりました。」
感情が高ぶったときに使いましょう!
心が折れる
「心が折れる」とは「やる気が無くなる」「心の支えが無くなる」「くじける」といった感情の言い換えです。「相手の心を折る」という使い方もあります。例えば、毎日積み重ねた努力が実を結ばなかったとき「心が折れる」と言います。「心が折れる」という表現はそれほど古いものではありません。女子プロレスラーの神取忍選手が、勝利後のインタビューで「(相手の)心を折ってやろうと思った」と言ったのが初めてだと伝わっています。
現在、心が折れるという表現は、軽い感覚で使われることが多いです。本来は「再起不能」に近い状態を表します。誤解を生まないように使いましょう。
例:「長年研究してきた太陽電池の研究は無駄に終わり、僕は心が折れて大学を去った。」
一般的に広まっている表現ですが、自身が使う機会は少ない方がいいですね
面白い日本語:さいごに
この記事では、面白い日本語の表現を紹介しました。日本語の面白さとは、表現の豊かさと使い分けの多様性にあるのではないでしょうか?なぜなら、日本で生まれ育った筆者でもいまだに辞書を引かなければ分からない面白い言葉があるからです。
例えば、最近知ったのは「耳が痒い(他人から自分のことを良く言ってもらいたい)」という表現です。読書や辞書を通じて、奥が深い日本語の表現を楽しんでみてはいかがでしょうか?