みなさんは「スクランブル交差点」と言ってどこの交差点を思い浮かべますか?「ぱっ」と思いつくのが「渋谷駅のハチ公前改札口」を出たところにあるスクランブル交差点かと思います。世界でもっとも有名ともいわれますよね。
歩行者にとっても自動車にとっても優しくて安全で素晴らしいこのシステムはアメリカの交通技術者が自分の娘の通学風景を見て思いついたと言われています。
今回はそんなスクランブル交差点の「スクランブル」とはどんな意味、どんな交差点から始まり、ルール、そして世界一の渋谷のスクランブル交差点について紹介したいと思います。
目次
スクランブルとは「ごちゃごちゃに混ざった」という意味
皆さんスクランブルと聞いてどんなことを思い浮かべますか?軍事関連に詳しい方は「国籍不明の航空機などに対する緊急発進」と言ったイメージを思い浮かべるでしょう。最近のニュースなどでは「テレビのスクランブル放送」といったような時にも使われます。
日常的には「スクランブルエッグ」を思い浮かべる方が多いのかと思います。私自身は「スクランブルエッグ」を一番に思い浮かべます。
スクランブル交差点のスクランブルもスクランブルエッグに近いようなイメージです。「ごちゃごちゃに人が混ざり、行き交っている交差点」ですよね。少なくとも緊急発進のような危機迫った感じではないはずです。
スクランブル交差点とは「歩車分離式交差点」
ではスクランブル交差点とはいったいどういったものなのか・・・って言うまでもなく皆さんご存じだと思います。歩行者信号が青の時はすべての歩行者信号が青で、すべての自動車の信号はすべて赤。だから、自動車が交差点に入ってくることもなく、歩行者が安全にわたることができる交差点ですよね。
つまり「歩車分離式交差点」でかつ「斜め横断が許されている交差点」をスクランブル交差点と言います。街中の交通量の多い交差点がよくスクランブル交差点になっていますよね。
右・左折する車と歩行者との接触事故を防ぐといった理由は勿論なのですが、歩行者が交差点を斜めにわたることもできます。だから本当なら信号を2回待たなくてはいけない斜め先のブロックへ、1回の青信号でわたれるところも嬉しいですよね。
~ちょっとブレイク~ 緑色なのにどうして「青信号」?
皆さん一度は感じたことがあると思います。「どうして緑色の信号なのに青信号というの?」と。実は青リンゴや青葉などと同じような理由があります。
時は平安時代までさかのぼります。もともと日本には「赤」、「白」、「黒」、「青」という色の表現方法しかありませんでした。
そんなこともあり英語でいうgreen appleを「青りんご」と言ったり、江戸時代の俳人山口素堂の「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」の句に出る「青葉」であったりします。その他「青じそ」、「青汁」などと同様に緑色の信号なのに「青信号」と呼ばれるようになったのではないかと言われています。
法律でも一時期「緑色信号」の記述がありました。しかし、「緑色」が馴染まず、浸透しなかったこともあり、現在の法律には「青色の灯火」となっています。
スクランブル交差点は「バーンズダンス」とも呼ばれる
アメリカではスクランブル交差点は「バーンズダンス」とも呼ばれます。この名はスクランブル交差点を世界で初めて提案した「交通技術者ヘンリーバーンズ」の名前に由来します。
バーンズさんが「自分の娘が学校に向かう途中、交差点を渡るのに苦戦している」のを見て思い付きました。1940年代の後半に世界で初めてのスクランブル交差点を彼の地元コロラド州デンバーに設置したと言われています。
日本では「スクランブル交差点」と言いますが、イギリスでは「Xクロッシング」と呼ばれ、カナダでは「スクランブルコーナー」と呼ばれています。
日本で初めてのスクランブル交差点は1968年熊本県熊本市の子飼(こかい)交差点に設置されました。やはりこの交差点も渋滞に悩まされていたことが元で設置されました。東京が最初じゃないのは驚きですよね。
ちなみに2017年時点で日本には876か所のスクランブル交差点があります。都道府県よっては1か所もスクランブル交差点が設置されていないところもあります。
~ちょっとブレイク~「ラウンドアバウト」って知っていますか?
田舎民の私には「スクランブル交差点」でもおどおどしてしまうのですが、近年ロータリーのように左回りにグルーっと回る感じの交差点があるのをご存じですか?その名は「ラウンドアバウト」と言います。ロータリーのように円形で、左折して円(交差点)に入り、行きたいところで円(交差点)を抜け出します。
出入りするところに停止線や信号機がある場合を「ロータリー交差点」、停止線や信号機もない、本当に自分の判断だけで交差点を出入りする交差点を「ラウンドアバウト」と言います。本全国に2021年3月の時点で126か所もあるといいます。慣れるまでが大変そうですよね。
スクランブル交差点では自転車を降りて渡る
歩行者がスクランブル交差点を渡る時は、青信号の時自由に渡ることが許されます。しかし自転車は・・・法律上注意しなければならない点があります。
自転車は軽車両で基本的には車道を走らなければなりません。車道を走るということは自動車と同じ信号に従わなくてはならないのです。
ただし降りて自転車を引けば歩行者なので歩行者と同じような扱いになります。だからスクランブル交差点を斜めにわたることができます。面倒かもしれませんが、自転車でスクランブル交差点を渡る時は自転車を降りましょう。
スクランブル交差点は舞台ではありません
上にスクランブル交差点を「バーンズダンスとも言う」と話しましたが、青になった瞬間の交差点は誰もいない「大きな舞台」のようですよね。でも舞台ではないので決して勘違いしないでください。皆さんはそんな勘違いをしたユーチューバーが起こした事件を覚えていらっしゃるでしょうか?
『2019年にチャンネル登録数130万人をこえる人気ユーチューバー。渋谷のスクランブル交差点の真ん中にベッドを持ち込んで「スクランブル交差点にガチベッドで寝てみた」というタイトルで動画を撮影。「歩行者の通行を妨げたということで」警視庁はこのユーチューバーと撮影に関わった人たちを書類送検しました。』
軽く踊りながら渡るのであればいいのかもしれませんが、迷惑をかけるような行為は絶対やめましょう。
世界で最も有名な渋谷のスクランブル交差点
日本のスクランブル交差点の代名詞ともいえる渋谷駅前のスクランブル交差点は1973年にスクランブル化されました。
渋谷駅西口駅前から渋谷公園通り通ずる南北の道と、宮益坂(みやますざか)から道玄坂(どうげんざか)に通ずる東西の道が交わるところにあり、さらに北西に渋谷センター街が伸びた五本の道(10車線)が交わる交差点です。
近くに百貨店が何店もあり、若者に人気の「SHIBUYA109(渋谷109)」や待ち合わせ場所として有名な「ハチ公前広場」が近くにあることなどもあります。多い時には1回(2分間)の青信号で3000人もの人が渡るともいわれています。
また、ハロウィーンや年越し、サッカーのワールドカップの人の集まりなど、テレビで目にしたことありますよね。この賑わいを警備する警察官を「DJポリス」と呼び始めたのもこのスクランブル交差点です。
最後に
私の住む田舎ではあまり目にすることのないスクランブル交差点。便利で安全ですが、公共の道路ということを決して忘れずに。「自転車の時は降りて渡る」など、人に迷惑をかけないように利用しましょう。DJポリスが緊急発進(スクランブル??)しないようにルールをわきまえましょう・・・。