皆さん、動物園は好きですか?最近いつ出かけましたか?「子供のころに行った思い出はあるけど、最近行っていないなぁ」とか、「自分の子供を連れて時々行っています」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は近年、以前とは動物の展示方法が変わりだしています。その先駆けとなったのが北海道・旭川市にある旭山動物園の行動展示です(皆さんもメディアで耳にしたことがあるのではないでしょうか?)。以前は狭い檻に入れられた動物を見る「形態展示」でした。しかし現在、形態展示では見られない野生動物本来の動きが見られる動物園が増えてきています。
今回はそんな動物園についての雑学です。子供だけではなく、大人が楽しむ方法、動物本来の行動を見せるために動物園が行っている工夫についてご紹介します。
目次
行く前の準備・計画
はじめに動物園へ行く時に持って行くと便利なもの、前もって行っておきたい準備をご紹介します。
オペラグラスを持っていく
動物園にはオペラグラスまたは双眼鏡は必ず持っていきましょう。動物園の動物、例えばキリンやゾウなどの大型動物であっても柵から動物までは結構距離があります。動物の顔立ち・毛並み・模様などの外観。また、エサを食べたり、毛づくろいしたりする仕草など見たいと思いませんか?オペラグラスがあると細かな表情まで見ることができます。
檻の前には有料の双眼鏡が置いてある柵もあります。しかし時間制限があり「もう少し見ていたいのに消えちゃった」などということもあるあるだと思います。ぜひ、オペラグラスなどを持っていきしましょう。
また、(小さいものでいいので)メモ帳やウェットティッシュも持っていきましょう。ウェットティッシュは「餌やり」や「ふれあい体験」などの後、手を拭きたいですよね。ウェットティッシュも必ず持っていきましょう。
当日は開園と同時に
動物園に行って「楽しみにしていた動物がほとんど動いてなかった」といった経験はありませんか?動物園の動物たちは昼間、外にいますが、夜(閉園時)は建物の中で過ごします。つまり朝、外に出てきます。
動物園の動物にも1匹1匹にも野生動物と同様、縄張りがあります。朝、外に出てきた動物は「自分の縄張りに異常がないか?」と確認のために動き回るのです。また、狭く空気のこもった建物の中にいた動物たちが外に出られたという解放感もあります。だから朝一は活発に動く動物が多いのです。
動物園へ出かける朝は早起きをして開園と同時に入園しましょう。
あらかじめ餌やりの時間、当日どんなイベントが行われているかチェック
朝一に活発に動く姿も見たいのですが、動物の行動で一番見てみたいのは「食事姿」だと思います。
まさかはと思いますが、排泄姿を見たい方はいないでしょう。
餌やり体験がある動物はその時間を、(体験がなくても)職員が餌をあげる時間があります。こういった時間をあらかじめ調べておきましょう。
また「夜の動物園」「動物園の裏側」を見るイベント、特別展示やフェスティバル、セミナーなども行われている場合があります。当日どんなイベントがあるかを確認しておきましょう。
予約が必要なのも・いらないものなどがありますので確認しておいてください。
回るコースを決めておく
ユニバーサルスタジオやディズニーランドなどテーマパークへ行くとき、皆さんは「入場したらまずどこへ行って、何時のパレードを見て・・・」などと計画を立てると思います。動物園に行く時もこれらテーマパークと同じように回る順番の計画を立てて行きましょう。
餌やりの時間、イベントの時間、動物ふれあい体験の時間などを考えてコースを考えましょう。あと忘れちゃいけないのがお弁当の時間。いつ食べるか、食べられる場所も調べておきたいですよね。
フォーカルアニマルサンプリング・・一匹の行動に注目
動物園では1つの展示スペースには同じ種類の動物が何匹かいると思います。この動物たち全体を見るのではなく、1匹の行動に注目するのがこの「フォーカルアニマル」という観察の方法です。
これは研究観察に用いられる方法で、本来は「1分ごと」など時間を決めて「1匹がどんな行動をとっているか」を記録します。
普通に動物園を楽しみに行っているのであれば1分ごとの記録をする必要はありません。しかし1匹に注目してその行動を見ていると「あいつ、何やってんだろう?何をしようとしているのだろう?」「どんな気持ちなのだろうか?」と1匹に寄り添うことができ動物園を楽しめます。ぜひ、行なってみてください。
持参したオペラグラスも利用して細かな動きも見るとより楽しめます。
動物に配慮した展示・アニマルエンリッチメントとは
エンリッチメント(enrichment)とは「ゆたかにすること」といった意味です。「人間に飼育されている動物の生活を豊かに、幸福な生活を送れるようにすること」がアニマルエンリッチメントです。
近年、「動物園に行って珍しい動物を見る」というより「動物の活き活きした姿を見たい」という来園者が増えています。こういったこともあり、動物園のアニマルエンリッチメントが進む傾向にあります。
ここからはアニマルエンリッチメントの中でも「生態展示」と、新たなエサの形「屍体給餌(とたいきゅうじ)」についてご紹介します。
動物本来の姿が見られる「生態(的)展示」
動物園と言うと「狭い織りの中で暮らす動物、かわいそう。」と思われる方も多いのではないでしょうか?この展示方法が近年、変わってきています。野生の動物が暮らす素の姿を見ることができるようになってきました。つまり動物本来の姿です。例えば
・野生では地上30メートルで暮らすオラウータン。その檻に、地面ではなく空中を渡り、移動できるようにロープを設置する。
・湿地に棲む鳥の飼育エリアに、生息する湿地帯と同じような土や植物が生えた池を作る。
などがあります。このような野生の動物らしい姿が見られる展示を「生態(的)展示」です。動物本来の姿が見られるだけでなく、その動物にとってもストレスがたまらない活き活きとした生活ができる展示方法です。
屍体給餌~ちょっと残酷だけど自然界に近い食事
「屍体給餌」という言葉を初めて聞いた人が多いと思います。これは肉食動物への餌やり(給餌)の方法です。「屍体」の「屍」は「しかばね(生き物の死骸)」ですよね。つまり、死んだ動物を餌にします。
もちろん、これまでも肉食動物の餌も死んだ動物のお肉です。でも精肉にカルシウムなどを混ぜたものでした。しかしこの「屍体給餌」は精肉のように裁いてないのです。
頭などは取り除いてありますが骨付き、毛の付いた肉を与えます。簡単に言えば「獲物をぶつ切り」にした状態の餌です。こういった餌を与えると食事をするのに時間をかけ、毛の生えた皮や骨から肉を引きちぎって食べます。その動物本来がする食事の姿に近付くのです。
皆さんは動物園で動物があっちに行ったりこっちに行ったりするのを見たことがありませんか?これは動物園という環境にストレスを感じているのです。屍体給餌によりこのストレス行動が軽減されたという研究結果もあります。
「こんな酷いことをしてまで餌にしなくても・・・」や「餌になる動物のエンリッチメントは?」と考える方もいらっしゃると思います。日本では屍体給餌に用いられる動物は、イノシシやシカなど害獣として駆除された動物が使われます。
駆除のために捕獲された動物は普通捨てられてしまうのですが、動物園で餌になり、命の活用につながります。
日本では害獣を与えていますが、デンマーク・コペンハーゲンの動物園では飼っていたキリンを餌にしたこともあります。実はこの動物園ではキリンが増え、また近親相姦の可能性もあり、安楽死させました。このキリンをライオンの餌にしたのです。
さらにショッキングなのはこのキリンを餌にするために解体するところを一般の来園者に見せたといいます。「動物を知るための教育の一環」として行われました。これには賛否両論あったそうですが、あなたならどう思いますか?
最後に
いかがでしたでしょうか?動物園に行きたくなりましたか?
これを読んで、「百獣の王ライオンの屍体給餌が見てみたい!」と思った方もいらっしゃるかもしれません。ここで1つ残念なお知らせがあります。1903(明治36)年4月に開園、1906(明治39)年よりライオンを飼育経験があり、日本初のライオンの繁殖に成功した京都市動物園からライオンがいなくなりました。これもアニマルエンリッチメントのためです。
ライオンは野生では群れを成しており、狩りも群れで協力して行います。しかし京都市動物園では何匹も飼うだけのスペースが確保できないからだといいます。悲しいですが、京都市動物園も苦渋の決断だったことを分かってあげてください。