こんにちは!モクレンコラム福祉コラム担当のもち猫です!
今回のテーマは「HSP」について!
HSPとは「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略語で、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された言葉です。
日本語では「敏感すぎる人」「繊細な人」などと訳されます。HSPの気質がある人は、他の人が気にならないような音、光、匂いなど、また他人の感情まで‶気づいてしまう〟繊細なこころを持っています。筆者もHSPの気質があり、聴覚がとても過敏です。
時には「空気」の音が気になるまでに聴覚が敏感になってしまいます。仕事中も雑音を避けるためヘッドフォンをして仕事をしています。
今回はそんなHSPの気質がある人の「生きづらさ」や、HSPがある人が少しでも気楽に生活できるような対処法を紹介していきたいと思います!
目次
■HSPってどんな症状?~繊細過ぎる人たち~
HSPとは前述のように「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略語で、エレイン・N・アーロン博士によって提唱されました。
HSPの気質は‶生まれつきもっている気質〟であるため、親の養育態度や育った環境が悪かったからそういう気質を持った、というわけではありません。
他の人が「そこまで気にしなくていいんじゃない?」ということや様々な刺激に対しても敏感で、日常生活を送るだけでも疲労困憊してしまいます。
HSPの人にとっては、他の人が「気にしなくていいよ」と言うことに対しても「気にしないって一体どうしたらいいの?」と思うばかりで、周りのアドバイスなど役に立たなかったことが多いでしょう。
なぜなら、意識せずとも‶気づいてしまう〟のですから。
繊細な気質は生まれつき持っているものなので、繊細な人に「鈍感になれ」といっても無理な話です。
このHSPの気質は以前は「性格によるもの」だと誤解されていました。しかし、アーロン博士が行った調査により、5人に1人の割合でHSPの気質をもっている、ということがわかりました。
生まれつき背が高い人がいるように、生まれつき繊細な人がいる、ということが判明したのです。
HSPがある人とない人では脳の神経システムに違いがあることが分かっています。つまり、脳のつくりがちがうので、HSPでない人が気づかない些細なことでもHSP気質の人は‶気づいてしまう〟ということが起こり得るのです。
この‶気づいてしまう〟原因は、こころのアンテナが情報を取捨選択できず、あれもこれもと情報をキャッチしてしまうことからだと考えられています。他の人のアンテナに比べて、情報をキャッチする力が強すぎるのです。
そして、情報でいっぱいになったアンテナは壊れてしまい、その人自身のこころが壊れてしまうことになります。
HSP気質の人にとって必要なのは「良い情報・悪い情報」をきちんと選んでからキャッチし、それをコンパスに自分にとって有益な方向へ進んでいくことです。繊細なアンテナで「良い情報」を沢山手に入れられるといいですね。
■感覚過敏~音、光、匂い……。とにかく気になる!~
HSP気質の人は、音、匂い、光、味覚などに対して過度に敏感であることがあります。
例えば、視覚からの情報について。
筆者は、スーパーなどに買い物に行ったときにすれ違った人の顔や服装、また駐車場に止めてある車のナンバーなどを覚えていて、次の週に同じ店に買い物に行ったときに「あ、あの人先週もいたな」などと思い出すことが何度もあります。
別に記憶しようとしている訳ではない、でも‶何となく〟視界に入ったので覚えているという感じです。
また他には強すぎる照明やチカチカとした飾り付けなど、派手なものは目に入ると気持ちが落ち着きません。服屋さんに行って服を選ぶ時も、色鮮やかなものが飾られていたりすると少し目が痛くなったりします。
こういう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
次に聴覚。
前述のように筆者は聴覚過敏です。
仕事場では上司の許可を得て、ヘッドフォンで音楽を聴きながら仕事をしています。そうしないと周りの人の声が波のように襲ってきて、それが頭に全て詰め込まれる感じがして苦しくなってしまうからです。
他の例を挙げると「突然の大きな音」が苦手な人もいれば「自宅の外にある自販機の音が気になる」と言う人などがいます。
そんな小さな音まで気になってしまうのですから、外の世界は刺激で一杯です。筆者のようにイヤフォンやヘッドフォンを活用している人も多いでしょう。
そして嗅覚。
お店などに行くと、様々な匂いが混在しています。人の香水の匂い、お惣菜の匂い、車の排気ガスの匂い……。嗅覚が過敏な人にとっては、スーパーやデパートなどに行く際はなんらかの対策をしていかないと「匂い」のせいで疲れが倍増しすることでしょう。
このように、様々な感覚が過敏で、日常生活で「生きづらさ」を感じているHSP気質の人はかなりの数いるのではないでしょうか。
次は人間関係編です。
■私って細かすぎ?~周りの人たちのことを気にしすぎてしまう~
HSP気質の人は、五感だけでなく周囲の人たちの機嫌や仕事のやり方に対しても過敏な所があります。
例えば上司の朝の挨拶がちょっとぶっきらぼうだったら「あの人今日は機嫌が悪いのかな。私何かしたかな……」と自分と結びつけて考えてしまったり、同僚が上司に叱られているのを見て感情移入しすぎて自分まで気が滅入ってしまったり……。
HSP気質の人は「共感性が高い」とも言われているので、相手のネガティブな感情なども感じ取ってしまいやすいのです。そのため、誰かが怒られているのを見たりすると、自分も嫌な気分になってしまいます。
★助け舟を出したつもりが……。★
また、HSP気質の人にはこころ優しい人が多く‶困っている人がいると放っておけない〟と言う人もたくさんいます。
そのため、同僚などが大変そうにしているとつい「手伝おうか?」と言ってしまいます。
しかし、それがトラブルにつながることもあるので注意しなければいけません。もし手伝った仕事にミスがあった場合、助けてあげて感謝されるはずの同僚から「あなたがやったところがミスに繋がったじゃないか!」などと、とばっちりを受けることもあるからです。
そんなことがあると、「せっかく○○さんのためを思ってやったのに……」と落ち込むことになります。しかも‶自分が手伝った所のせいでミスに繋がった〟と言われてしまったら、自己肯定感も下がるばかり。
HSP気質の人はその繊細さのせいでネガティブ思考になりがちな所もあります。一度落ち込んでしまうと負のスパイラル。
★こころの健康にも気をつけよう★
HSP気質の人はそうでない人に比べてうつ病にかかる確率も高いと言われています。上に挙げたようなネガティブな出来事や、感覚過敏からくるストレス、自己肯定感が低いことからこころに疲れがたまってしまい、うつ病につながるという場合もあるのです。
「こころがしんどいな」「最近眠れないな」「会社に行きたくないな」と思う日が続いたら、精神科や心療内科を訪れてみるのも一つの手かもしれません。早期発見できれば治癒するのも早くなりやすいので、自分のこころと一度向き合ってみましょう。
■HSP対策法~感覚過敏について~
まず五感が鋭い人の対策法をご紹介します。
★視覚過敏★
「視覚過敏」の人は、お店の光やごちゃごちゃしたお店の中にいると、目から入ってくる情報で頭がいっぱいになり、とても疲れてしまいます。
そこでおすすめなのが眼鏡やサングラス。特に縁の太いもの、サングラスなら色が濃いものがいいです。縁が太いものだと、「この部分(縁の中)だけ見ていればいい!」と意識するだけで、他の部分にはあまり意識がいかなくなり、刺激も少なくなると思います。
★聴覚過敏★
スーパーや服屋さんなどにいくと、大音量で音楽が流れていたり、大勢の買い物客の声が波のように襲ってくるような気持ちになります。そこでおすすめするのが耳栓やヘッドフォン(イヤフォン)
耳栓だと、通販などで1つ100円ちょっとで買えるものからノイズキャンセリング機能のついた高性能のものまでさまざまな種類の耳栓があります。
者が使っているのは300円くらいの耳栓で、左耳用と右耳用がコードでつながっており、使わないときは首にかけられる仕様になっています。
ノイズキャンセリングイヤフォンに関しては、その精度などにもよると思いますが、1500円前後~2万円前後で売られています。これも人それぞれ合う・合わないがあると思いますので、ネットなどで購入する時は自分の用途にあったものを選びましょう。
★触覚★
「何か特定のものに触れるのが苦手」「嫌なことは肌から感じ取る」という感覚過敏の人もいるようです。そこで「自分がいいと思う触り心地」のものを探してみましょう。
ふわふわしているもの、サラサラしているものなど。
色んな触感があります。そしてお気に入りの触感が見つかったら、その生地でできているバスタオル、カーディガン、タオルケットなどを揃えましょう。自分の好きな触感のものに囲まれて過ごしているだけで、少しはこころが和らぐと思います。
★嗅覚★
こちらもいろいろと対策はあります。
香りが強そうな場所に行くときはマスクをする、好きな香りのアロマオイルやハンドクリームをカバンに入れておいて「どうしても辛い!」となったらあまり人がいない所に行って、オイルの香りで安心できるようにしたり、ハンドクリームを塗ることで好きな香りに包まれたりすれば、こころも落ち着きを取り戻します。
今はアロマの精油をいれておける‶アロマペンダント〟などというものも売られていますので、これを活用するのも一つの手ですね。
★味覚★
また、HSP気質の人の中には「食品添加物がたくさん入っているものはダメ」「ファーストフードやスナック菓子がダメ」と言う人もいます。
味も「刺激の一つ」なので、感覚過敏の人にこういった傾向があってもおかしくありません。
そういった人は、無農薬野菜や、原材料に添加物が少ないものを選んで買う、などがおすすめです。
■HSP対策法~人間関係(特に職場)について~
HSP気質の人は‶人と長い間一緒にいるとそれだけで疲れる〟という人が多数です。
原因は気疲れ。
前述のようにHSP気質の人は色んな所にアンテナを張り巡らせているため、人が多い職場やグループでの友達付き合いはとても疲れるものなのです。
そこで「人から受ける刺激」をちょっと和らげる方法を紹介します。
★相手はテレビの向こうの人★
HSP気質の人は特に感情的にものを言ってくる人が苦手。自分の主張ばかり押し付けてきたり、ガンガン大きな声で怒鳴ってきたり……。
そういったときは「相手はテレビ画面の向こうの人だ」とイメージしてみてください。
相手が感情をぶつけてくるようなときには「相手はテレビの向こうの人」と思ってみると、その感情が和らぐような気がします。自分と相手の間に境界線を引くのです。そうすれば相手の感情を丸ごと受けることはなくなり、ストレスも少しは減るはずです。
★助け舟もほどほどに★
前述のように、HSP気質の人は「困っている人がいると放っておけない」という心優しい部分も持ち合わせています。だから誰か手伝ってほしそうにしているとつい「手伝おうか?」とひと言かけてしまうのです。
でも、それがうまくいけばこちらも一安心、となりますが、先ほどのように「あなたがやったところが原因でミスをした!」と嫌な思いをすることもあると思います。
そのため、助け舟を出すのもほどほどに。
‶相手のためを思ってやってあげる〟のはたしかに良いことですが、やってあげてばかりいれば相手の為にもなりませんし、自分も余計な仕事が増えるばかりです。
★助け舟が衝突のもとになることも★
それに「助けたい」というのは「自分から言いだしたこと」です。例えば相手から頼まれてもいないのに手伝いを勝手に引き受けて、自分のことがどんどん後回しになってしまったとします。
でもそれにイライラしても、相手を「助ける」と言い出したのは自分。相手のことをやっているせいで自分の仕事が進まないイライラが積もり積もって爆発して「あなたのためを思ってやったのに!」といっても相手からしたら「手伝って」などと言った覚えもない、勝手にやったのになんだ、ということになるでしょう。
そんな無駄な衝突を避けるためにも、相手のことが気になっても見守る程度にするといいと思います。
「こうしたほうがいいんじゃないかな」「困ってるみたいだな」と見守りを続けるうちに、相手が本当に困れば「ちょっとお願いがあるんだけど……。」と相談を持ち掛けてくるでしょう。
そこでようやくあなたの出番です。
すぐに手を出すのではなく、相手を‶見守る〟というのもHSP気質の人にとっては必要なスキルだと思います。相手にとっても、できる限り自分の力でやらせることで、成長のいいチャンスになるはずです。
■HSPまとめ
以上、HSP気質がある人の性質や、症状、対処法など紹介してきました。
HSP気質の人は他の人より敏感な感覚を持っているため「生きづらさ」もあると思います。しかし、対処法の章で紹介したようなことを実践してみると、少しは生活するのが楽になります。
筆者のヘッドフォンの件もそうです。以前の職場はアパレルで、ガンガン音楽が鳴っている中で仕事をしていたので、終業近くにはからだもこころもヘトヘトでした。
でも今は職場も変わり、ヘッドフォンを使うことを許可されたため、以前よりだいぶ快適な仕事環境の中で作業をしています。
このコラムを読んで頂いて「これなら私にもできるかも」という対処法があったら、ぜひ実践してみてください。
また、自分が働きやすい環境づくりをするためにも、周りの人に相談して、環境調整を行ってもらうのも必要なことです。
「こうだったらもっと働きやすいのにな」と思うことがあるなら、ぜひ一度上司や同僚に相談してみてください。可能な範囲で対応してくれるはずです。自分が働きやすい職場環境を作ろうと思ったら、まずは「自分から動くこと」ですよ。
HSP気質があっても「自分らしく」仕事をするにはどうすればいいか、今一度胸に手を当てて考えてみてください。きっと‶生きづらさ〟から解放される道が拓けるはずです。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。
