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名作「坊ちゃん」清と坊ちゃんのエピソードを紹介!清の愛情の深さとは

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あなたは夏目漱石の小説「坊ちゃん」を読んだことはありますか?「坊ちゃん」は小学校の教師である坊ちゃんの日常を描いています。学校生活や友人・家族との関係を通じて成長していく姿が印象的です。この記事では「坊ちゃん」の登場人物のうち、清(きよ)という年老いた女性にスポットライトを当てて紹介します。

坊ちゃんと清は、いわば主人と召使の関係です。清は東京出身の坊ちゃんの生家で雇われていた下女です。もとは名家の生まれで身分のある女性でしたが、明治維新で家が没落し、坊ちゃんの家の下女※となっています。

そんな清が坊ちゃんへ向ける愛情はとても深く、二人のエピソードは読む人の胸を打ちます。ぜひ楽しんで記事を読んでください。
※下女:雑用に使われる召使の女性

清と坊ちゃんの関係について

坊ちゃんは、東京に住んでおり、家族構成は父、母、兄、坊ちゃんの4人です。加えて、下女の清がいます。坊ちゃんは、両親から冷遇されています。しかし、清だけは坊ちゃんに暖かいまなざしを向けるのです。物語の冒頭で両親が亡くなると、清はますます坊ちゃんを可愛がるようになります。

両親から可愛がられなかった坊ちゃん自身は、清がなぜ自分を大事にするのか分からない様子です。そんな坊ちゃんは、清のことを「ほめられるおれよりも、ほめる本人の方が立派な人間だ。」と思っています。坊ちゃんも清のことを大切に思っているのです。

はち

坊ちゃんにとって、清は母親代わりの存在と言えます。

清と坊ちゃんのエピソード

坊ちゃんの唯一の理解者だった清

学生時代の坊ちゃんは、江戸っ子かたぎの人物で、短気なかんしゃく持ちでした。よく言えば、竹を割ったようなまっすぐな性格ですが、我慢の効かない性格です。

そのため周りとの衝突が多く、気に食わないことがあると感情が爆発して突拍子もないことをします。2階から飛び降りたり、ナイフで指を切ったり、家で宙返りをしてけがをしたり、無茶を繰り返します。

結果、周りの人だけではなく家族からも、のけ者扱いをされていたのです。そんな無鉄砲な坊ちゃんには、周りに理解者がおらず孤立していました。

しかし、清だけは坊ちゃんの味方でした。周囲の人たちのほとんど全員が坊ちゃんを非難していました。それでも、清は「あなたは真っ直ぐ(まっすぐ)で良いご気性だ。」と受け止めてくれたのです。

はち

清の坊ちゃんへの温かい言葉が印象的です。

坊ちゃんを大切に思う清

両親が亡くなり、兄が九州の大学へ行くことになったため、坊ちゃんの家は売られることになりました。坊ちゃんは下宿しながら学校へ通います。帰る家の無い清は、甥の家で暮らし始めます。こうして、清と坊ちゃんとの暮らしは終わったのです。以前から、清は坊ちゃんが家を持って独立したら一所に過ごす気でいました。

どうか置いて下さいと繰り返して頼むので、坊ちゃんも置いてやると返事だけはしたのです。すると清は、どこに住むなど計画を立てはじめました。

当時の坊ちゃんは、実は家なんて欲しくなかったため、欲しくないと清に応えるのでした。すると清は「あなたは欲が少なくって心がきれいだ」といって、返って坊ちゃんを褒めるのです。このように、清は坊ちゃんのことを何かにつけて褒めて励まします。

はち

清は坊ちゃんに全幅の信頼を持っていることが分かります。

坊ちゃんを見送る清

坊ちゃんは、兄から与えられた600円で物理学校に入学します。無事卒業した坊ちゃんは、校長の薦めで先生として四国に赴任します。出発の日、停車場で汽車に乗り込んだ坊ちゃんに、清は小声で言うのです。「もうお別れになるかも知れません。随分ご機嫌よう。」目に涙を一杯にためた清を見て、坊ちゃんも泣きそうになります。

清は高齢なので、これが今生の別れになるのではないかと考えたのでしょう。そして、普段は無鉄砲な坊ちゃんにもその気持ちは届いたようです。坊ちゃんの汽車が動き始めても、清はずっとその場に立っています。坊ちゃんは、清が随分と小さく見えたと言います。清と同様に、坊ちゃんも別れを寂しく感じたのではないでしょうか?

はち

清のさびしそうな姿が目に浮かびます。

清の坊ちゃんへの愛情

坊ちゃんとの手紙

坊ちゃんは赴任地へ到着してすぐに、清へ手紙を書きます。清からはなかなか返事が返ってこなかったのですが、後日、坊ちゃんの下宿先へ手紙が届きます。

手紙の内容は
・風邪をひいて寝込んでいたため、返事が書けなかった。
・読み書きが達者でないので、四日間下書きをして二日間かけて清書した。
・坊ちゃんはかんしゃくが強すぎて心配だ。
・坊ちゃんからもらったお金は坊ちゃんが家を持つときのためにとってある。
などと書いてありました。清からの手紙は坊ちゃんを大切に思う気持ちにあふれています。

坊ちゃんは、清書してあるとは言え読みにくい手紙を大切に読みました。後日、坊ちゃんは清へ返事を書こうとするのですが、清を喜ばせる手紙が書けません。とうとう「清の身の上を案じていてやりさえすれば、おれの真心(まこと)は清に通じるに違(ちがい)ない」と手紙を書くのは止めてしまいます。

はち

坊ちゃんも、清と同様に相手を大切に思っていることが伝わります。

坊ちゃんへの願い

物語の最後では、坊ちゃんと清の再会が描かれています。四国から東京へ帰るなり、坊ちゃんは清のもとへ向かうのです。清は坊ちゃんが帰ったのを喜び、涙をぽとぽとと落とします。そして、家賃6円の家で共に暮らしますが、清は肺炎にかかり死期を迎えるのです。清は、亡くなる前日に坊ちゃんと同じお寺のお墓に入りたいと願います。

「御墓のなかで坊っちゃんの来るのを楽しみに待って居(お)ります」と清は言いました。坊ちゃんは清の墓を自家と同じ寺に作り「坊ちゃん」の物語が終わります。

はち

清の、坊ちゃんと一緒に暮らしたいという願いが叶いましたね。

さいごに

坊ちゃんと清の間は、家族より強く深い愛情で紡がれています。短気で問題児だった坊ちゃんを、清だけは褒めます。一方で坊ちゃんも、事あるごとに清を思い出して気にかけています。物語の序盤で一度別れた二人ですが、最後には一緒に暮らすことになりました。清は念願が叶って、さぞ嬉しかったことでしょう。

清の坊ちゃんへの深い愛情は、その献身的な姿から伝わったのではないでしょうか?特に、別れと再会のエピソードは胸に迫るものがあります。清の心情を想いながら「坊ちゃん」を読むと、より深い感動が得られます。

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はち
趣味は音楽鑑賞、新聞に掲載されているパズルを解くこと。身近なものから専門的な雑学まで幅広く執筆。