こんにちは!福祉コラム担当のもち猫です!
今回のテーマは‶ヤングケアラー〟について。
みなさんは「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことはありますか?核家族化や高齢化がすすんだ今‶親や祖父母、きょうだいの介護や世話〟を担っている子どもは増えつつあります。家族構成員が少なくなったため、子どもも学校に行きながら介護などをやらざるを得ない状況に陥っているのです。
2021年4月に公表された厚生労働省・文部科学省の調査では、「家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」が中学生で17人に1人(5.7%)、高校生で24人に1人(4.1%)が「世話をしている家族がいる」ことが明らかにされました。
(対象:約1万3000人)
そんなヤングケアラーについてまとめました。(ヤングケアラーの実態に関する調査研究)
■ヤングケアラーって?~学校と介護を両立させる子どもたち~
★増加するヤングケアラー★
ヤングケアラーとは
「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担う様な責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポート等を行っている18歳未満の子ども。ケアが必要な人には障がいや病気のある親や高齢の祖父母であるが、きょうだいや他の親族の場合もある」
とされています。
核家族化や高齢化により、ケアができる家族構成員も減ってしまったため、子どもにも介護の負担がのしかかってきたのです。ヤングケアラーは、通常大人が担うべきこともやらざるを得ない状況にあります。また親が病気がちで祖父母や年下のきょうだいの世話をしなければならなくなったなど、家族のケアをするようになった理由は様々です。
しかし、ヤングケアラーの子どもたちは「自分がヤングケアラーだ」と気づかない場合も多いです。なぜなら‶小さい頃から当たり前のように、自然にやっていた〟ので、それが普通だと思っている場合も多いからです。
例えばきょうだいの世話も「おにいちゃんなんだから」「おねえちゃんなんだから」と言われ続ければ「そうか、年上の私(僕)がしっかりしなくちゃいけないんだな」と自然と思うようになってしまいます。そのため‶年下の面倒をみるのは当然のこと〟と思うのです。
また、両親や祖父母が家事や仕事で忙しそうにしている姿を見て「私(僕)も何か手伝わなきゃいけないな」というような使命感をもってしまうことも少なからずありません。
こういった背景から、小さい頃からきょうだいの面倒を見たり、家事の手伝いを担うことが当たり前のこととなってしまい「自分はヤングケアラーだ」という意識を持たずに過ぎていくのだと思います。
★ダブルケアのリスク★
核家族化が進んだ今、家庭の中の子どもが一人きり、と言う場合もあります。そのような場合、年齢を重ねると父母がそろって要介護状態になるということも懸念されます。
また、もし早期に結婚し子どもを産んでいた場合‶子育て+介護〟の「ダブルケア」が必要な状態が起きる可能性があります。最悪の場合、学校や仕事を辞めざるを得なくなります。
学習の場を奪われるどころか、生活にも困窮してきます。
■ヤングケアラーのリスク~過剰な負担とこころの問題~
ケアの内容としては、例えば
・家事(食事の準備、掃除、買い物など)
・一般的なケア(薬を飲ませる、服を着替えさせるなど)
・入浴、排せつ介助
・年下のきょうだいの面倒を見る
・家計を支えるためのアルバイト
などです。
親や祖父母が介護が必要な状態なら、入浴や排せつなどの介助が必要となってきますし、そんな状態で買い物に行ったり家事をすることもできないので、当然のごとく負担は子どもにのしかかります。
それに加えて年下のきょうだいなどがいれば、彼らの世話も背負わなければなりません。
そうなると、ヤングケアラーは自分の時間など取れないことが当たり前になります。それどころか、介護疲れや睡眠不足などによって不登校につながる場合もあります。
ケアに追われて宿題がやれない、テスト勉強もできないなどで学校の成績も落ちてしまうかもしれません。そういった理由からの学力低下により、本人が将来行きたかった学校にレベルが追い付かなくなってしまったり、希望していた職に就けなくなるなど、彼らの人生を大きく変えてしまうことにもなりかねません。
また、親などが重度の被介護者であれば夜間のケアも必要となってきますし、安心して眠ることすらできなくなります。そうすると、身体的にも精神的にも負担が増えてきます。
またケアをずっと続けていくことになれば、ストレスから不眠になったりイライラが抑えられない、感情が不安定になる、憂鬱な気分になるなど精神面の問題がどんどん出てくることでしょう。しかし背負うケアの量は減らない。こころがボロボロの状態でも、ケアを行っていかなくてはならない。
そんな悪循環に陥ってしまう前に、何か手を打たなければなりません。
■ヤングケアラーのあなたへ~自分の人生を歩むために~
★ケアは‶あなたが〟背負わなくてもいい★
ヤングケアラーと呼ばれるこどもたちは、「自分がヤングケアラーである」という認識も薄く、‶自分が家族のケアをしている〟ということを周囲に打ち明けることは少ないようです。
「友達に気を遣わせるから」や「こういう話をすると周りの空気が暗くなるから」という様な理由と「家庭の事情を知らない人に簡単に立ち入ってほしくない」という複雑な思いから、なかなか話題に持ち出せないようです。
ある調査では「望むサポート(ヤングケアラーがしてほしいこと)」に対して「特になし」が4割を占めていました。
前述のように、家庭の事情を知らない第三者に土足で踏み込んできてほしくないという思いが強いのでしょう。また「受けられるサポートがある」という知識の不足によるものもあるかもしれません。
★ヤングケアラー達へ★
しかし気づいてほしいのが「あなたのやっているケアは‶当然〟のことではない」ということです。本来あなたが担わなくてもいいことまで、あなたは一生懸命になって行っているのです。
親やきょうだいの世話で疲れていませんか?自分の時間は取れていますか?夜はきちんと眠れていますか?今一度、自分の1日を振り返ってみて下さい。
自分のことより家庭のことに時間を割いている割合の方が長いのではないでしょうか。そうだとしたらあなたは「ヤングケアラー」です。支援を受けるべき対象となります。
もしかしたら「自分がやりたいと思ったから」やっている若者もいるかもしれません。でも、今の状態を続けていけばやがてこころはキャパオーバーを起こし、からだもこころも壊れてしまうかも知れません。まずは「自分を一番に」考えてください。
「何かサポートを受けたいけど知識がない」と思っている人は、信頼できる大人に「自分の家は今こういう状況で、自分はこういうケアをしていて大変なんだ」ということを打ち明けてみてください。担任の先生でも、保健室の先生でもいいです。
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーがいれば、その人たちでもいいでしょう。自分が信頼できる大人にSOSの声を発信してください。
たしかに「簡単に立ち入ってほしくない」という気持ちは分かります。でもあなたが行っているケアは、本来は大人や専門職が行うことなのです。
あなたはもっと自分らしい人生を送っていいのです。
もし、勉強をする時間がなく自分の進みたい道にいけなくなったらどうしますか?睡眠不足やストレスが重なって、こころが壊れてしまったらどうしますか?「それでもいい」と思いましたか?
それでは、その状態が続いてあなたが倒れたらどうしますか?あなたもあなたがケアしていた人も、社会から何の支援も受けられず、孤立してしまうことになります。
自分だけで頑張らないでください。もっと周りを頼っていいのです。
周りの大人に相談すれば、市役所や社会福祉協議会、NPO法人などあなたを助けてくれる機関につないでくれるはずです。そうすれば、あなたの負担は少しでも軽くなるでしょう。
あなたのこころが、からだが壊れてしまう前に、SOSの声をあげてください。
すべて自分で解決しようとするのをやめてください。あなたにはあなただけの人生を送る‶権利〟があるのです。家族の為だけに生きているのではないのです。
あなたには未来があります。そんな「未来の自分」の為にも、家庭の問題を自分だけでどうにかしようとせず、第三者の力を借りる事をためらわないでください。
周りの大人も巻き込みつつ、力を得ながら少しずつ問題を解決に導いていきましょう。
あなたの未来が晴れ渡ったものになる事を願います。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。