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統合失調症患者を支援する~ステージごとの周囲の望まれる対応を紹介~

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今回は周囲の対応について解説します。

大切なのは「そっと背中を押す気持ちで支援する」こと。休息期や回復期は統合失調症の症状が再燃しやすい時期です。そこでとげのある言葉かけなどをしてしまうと、本人の症状は悪化してしまいます。

大切なのは本人のペースを見守り、「そっと背中を押すつもりで」支援するということ。あくまでも治療の主体は本人です。

周りが急かしたり焦らせると悪化しかねません。一番つらいのは本人だということをわかってあげてください。目に見えない症状を理解するのは難しいかもしれませんが、本人を理解しようと努力し、寄り添ってあげることで回復が早くなる場合もあるのです。

このコラムでは、ステージごとに望まれる対応を紹介しましたのでよろしければご覧ください。

■急性期に望まれる周りの対応は?

★なかなか理解しがたい本人の辛さ。急性期にはどう対応する?★

入院する時期というのは、急性期と呼ばれる割と症状が激しい時が多いと思います。幻聴や妄想に支配され、自分でも自分が分からなくなっている時期。それが急性期です。

この時期は本人にとっても家族にとっても一番辛い時期だと思います。

陽性症状では様々な妄想や幻聴に襲われますし、イライラや不眠、認知機能障害が一番強く表れる時期です。

しかし、妄想や幻聴は周りにとっては「現実味のないこと」ですし、どのようなことが本人の中で起きているのか理解しづらいため、家族も困惑することでしょう。

なぜなら、からだの傷のように「目に見える辛さ」ではないからです。「様子がおかしいけれどどう対応したらいいのかわからない」というのが周囲の本音でしょう。

周囲が症状を受け容れてくれればまだいいのですが、否定的な態度や言葉があると、本人は独り辛い思いをすることになります。そこで急性期には、周囲が「本人のありのままを受け容れる」態度が大切になってくるかと思います。

本人が幻聴や妄想のことを訴えても否定せず「それは辛いね」「そばにいるから大丈夫だよ」などと伝えることで、本人も少しは安心できるのではないでしょうか。

ただ、この時期の本人は思い込みが強くなっていますので、安易に「それは事実とは違うよ」「そんなことあるわけない」と言ってしまうと、本人を興奮させることになり、暴れたり大声を出したりと精神状態も昂ってしまいます。

その為「本人の言っていることは本人にとっては事実なんだ」と受け容れてあげることが大切です。例え不合理に聴こえても「ありのまま」を受け容れてあげてください。

この時期には、陽性症状を抑える薬が出される可能性が高いです。昂った精神を抑え、幻聴や妄想などの症状を取り除いていく為の服薬がなされると思います。

(医師の判断により出される薬は人それぞれです )

■本人が回復していく時期。周囲の支え方は?

★休息期。エネルギーをためる時期の対応★


この時期に大切なのは十分な休息と睡眠、そして本人が安心感を得られるように工夫して過ごすことです。急性期に使ったエネルギーを充電する時期ですので、本人が過眠になったり少しだらだらしていても、「これは怠けじゃなく病気の症状なんだ」と受け容れてあげてください。

また、生活のリズムを作るのにも協力してあげてほしいと思います。朝あまりにも遅くまで起きてこないようだったら起こしに行く、食事を一緒に食べる、軽い運動のために一緒に散歩に行く、などです。

本人が「生きていく為のエネルギー」をためられるように、病前と同じように振る舞ってください。特別なことをする必要はありません。「前と同じように」自然な付き合い方をすることで、本人もだんだん安定した心を取り戻していくでしょう。

また、服薬の見守りもしていってほしいと思います(特に本人が未成年の場合や高齢の場合)

ただ、本人の回復を願う気持ちも分かりますが、本人はまだ回復途上です。社会復帰するにはまだ早すぎますので「学校(仕事)に行け」「だらだらするな」など本人を刺激する言動は控えてほしいです。

休息期は症状が再発しやすい時期とされており、少しのきっかけで症状が再燃する場合もあるからです。本人が服薬管理をできない場合は、家族など周囲の人が、医師の指示通りに服薬できるよう手助けしてあげてください。

★回復期。社会復帰への第一歩!★


この時期は、だんだん活動の意欲が戻ってくる時期です。

病前に好きだったことをまたやり始めたり、場合によってはデイケアや就労継続支援事業所などに通い始めたりできるようになるかもしれません。

少しずつ、社会との関係を取り戻していこうという時期なのです。この時に周囲の人にしてほしいことは‶本人の状態に合わせて活動を助ける〟‶少しずつ活動を始めたからといって、焦らせない〟ということです。

まだ病気からの「回復途上」にあるのですから、いきなり病前のように活動ができるわけではありません。‶本人のペースで〟活動を行えるように見守りを続け、そっと背中を押すようなつもりで応援する。このような態度が必要なのだと思います。

本人の調子にも波がありますが、それに振り回されず一貫した態度で本人と付き合っていってください。調子が悪い時に叱責などしてしまうと、再発する恐れがあります。再発すると薬の効きが悪くなったり、再入院となることもありますので注意して見守りを続けましょう。

★精神科デイケアを利用するのも一つの手★


また、社会との接点として「精神科デイケア」があります。

精神科デイケアでは、料理やスポーツの他にも、コミュニケーションをとる練習をしたり、SST(社会生活技能訓練)と呼ばれるリハビリテーションも行われているところがあります。例えば「医師に薬の変更を申し出たい」や「職場での○○という状況でどう対応するか」などを想定し、実際に患者同士で演技をしてみて、その振る舞いについてどう思うか話し合ったりします。

SSTロールプレイやディスカッションを通じた人間関係の作り方を練習をするプログラムです。デイケアで行っているプログラムの内容はそれぞれ違いますので、もし「通ってみたい!」と思ったらどんな内容のプログラムがあるか問い合わせてから通うことをおすすめします。

周囲の人も「本人にとってどんなことを学んでほしいか」など考えながら、本人と一緒にプログラム選び・デイケア選びをしていくのが大切でしょう。

★そっと背中を押す態度が大切★


統合失調症を克服するには、本人の努力ももちろん大切ですが周囲の協力的態度も大切な要素となってきます。

統合失調症の治療は長い道のりになることが多いです。時には挫折しそうになる時もあると思います。そんな時でも背中をそっと押すような気持ちで、本人と共に回復への道を一歩ずつ歩んでいってください。このコラムが統合失調症で悩まれている方やその周囲の方への参考となれば幸いです。

著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。

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もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。