みなさん、日本には4つの季節「四季」があるといいますが厳密には6つの季節に分けられることをご存知でしょうか?普通は「春・夏・秋・冬」ですよね。でも春と夏の間と夏と秋の間に雨の季節「雨期」があります。今回はそんな雨期の中でも春と夏の間にある雨期、「梅雨」についてのお話です。
あなたは梅雨と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?ジメジメ、ムシムシ、外出が億劫になるなどなど、マイナスのイメージが多いと思います。
ところでみなさんは梅雨がどうして起こるか知っていますか?もしかしたらあなたも梅雨のことを知れば梅雨を予想できるようになるかもしれません。今回はそんな梅雨を制覇したいあなたに、梅雨の基本知識、「梅雨」の呼び名や語源、「梅雨入り」や「梅雨明け」がなかった年、「○〇梅雨」のいろいろ、梅雨の季節に咲くアジサイについてお話しします。
目次
「梅雨」の呼び名・語源

まずは「梅雨」という言葉についてご紹介します。
どうしてこの時期の雨を「梅(の)雨」のかと疑問に感じたことがある方も多いと思います。実は「梅雨」という言葉は・・・中国から入ってきました。中国でも梅雨を「ばいう」と呼んでいます。
「梅雨」という字があてられたかには諸説あります。中国でもこの季節は雨が多く、ジメジメします。湿度が高いとカビ(黴)が生えますよね。この「黴」という漢字を中国で「ばい」と読むことからカビを生やす雨ということで「黴雨(ばいう)」となり、当て字で「梅雨」となった説が1つ目。もう1つはちょうどこの頃、梅の実が黄色く熟すので「梅の雨」で「梅雨」となったとも言われています。
ではどうして日本では「梅雨」を「つゆ」と呼ぶのでしょう。たぶんみなさんのご想像の通り、「露」という言葉からきます。雨露がたくさん木の葉などに降り注ぐという意味で「つゆ」と呼ぶようになったといわれています。この「梅雨」を「つゆ」という呼び方は江戸時代にすでに使われていました。
「梅雨」とはいったいどういう現象?・2つの梅雨前線

梅雨は5月から7月にかけて雨を降らせる雨季のことですよね。この時期、雨が降るは日本のみならず、中国大陸の中国から韓国、ロシアの一部、また台湾でも降ります。北の冷たい高気圧と南の暖かい高気圧の鬩(せめ)ぎ合いでできる前線(梅雨前線)が雨を降らせます。
日本でできる梅雨前線には2つあります。1つは5月ごろ、南シナ海の方からの熱帯モンスーンと中国大陸の長江の方からの空気との間で停滞前線(梅雨前線)が発生します。この梅雨前線により沖縄県など南の地方の梅雨入りとなります。
もう1つはその後6月に、今度は本州付近に湿った暖かい太平洋高気圧と、これまた湿っているけどこちらは冷たいオホーツク海高気圧との鬩ぎ合いに変わり、停滞前線(梅雨前線)ができます。
これらの前線での鬩ぎ合いで暖かい高気圧が勝つと夏がやってきます。
梅雨の陽性型、陰性型-雨の降り方が違います。

同じ梅雨前線のもとでも雨の降り方には2種類あります。それは「陽性型」と「陰性型」です。
ものすごい勢いで降ったかと思ったら翌日いい天気になるのが「陽性型」です。また、逆に雨足はそれほどひどくはないですが、ずーっとじとじとした天気が続くのが「陰性型」です。
陽性・陰性の区分について降水量は関係ありません。また、陽性型の降り方は西日本でよく見られ、逆に陰性型は東日本でよく見られます。
梅雨入りや梅雨明けがない??

みなさんは梅雨入りや梅雨明けがなかった年があったってご存知ですか?と言っても決して気象台の人がボーっとしていたわけでも、「見逃した」わけでもありません。
梅雨入りがない!-梅雨前線の発生位置によります
梅雨入りが発表できない理由として、その年太平洋高気圧の勢力が強すぎて、梅雨前線が北陸地方付近で発生するパターンがあります。普通は梅雨前線が南の地域で発生し、北へ移動するのですが、北陸地方で発生してしまいます。そうすると北陸より南(南西)の地域では、「いつ梅雨入りしたのか」日にちを決められないのがこのパターンです(その後梅雨前線は南に下がり、梅雨のような状態にはなります)。
これまでに梅雨入りが発表されなかったのは1回だけ1963年、近畿地方と四国地方で発表されませんでした。とはいっても、降水量は平年並みでした。だから(お話しした通り)例年通り梅雨のような雨期はありました。梅雨入りが特定できなかっただけだと考えられています。
梅雨明けの発表がない!-オホーツク海高気圧の勢力
逆にオホーツク高気圧の勢力が強いと梅雨前線が今度は東北地方を抜け出せない(東北地方より北へ移動できない)ということがあります。こういった年の梅雨前線はそのまま秋雨前線になって南下していきます。つまり夏が訪れないのです。
東北地方で梅雨明けが特定できないことは時々ありますが、これまでそのほかの地域で梅雨明けが発表されなかったのが1度だけ1993年にあります。私も記憶にありますが8月になってもそれほど暑くなかったですし、「夏空」といった感じの日もなかったと思います。
さらに大変だったのが農作物です。天候不順で冷夏だったので農作物が育たず、食料自給率がカロリーベースで40%を下回りました。
「平成のコメ騒動」が起こったのがこの年で、家電量販店の城南電機が正規ルートを通さないヤミ米を販売や、また(日本人には食べなれないインディカ米である)タイのお米(タイ米)の輸入をしたのを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
暴れ梅雨、送り梅雨、帰り梅雨・・・

ここからは「〇〇梅雨」といったような梅雨の表現についてご紹介します。
走り梅雨または迎え梅雨
初期の梅雨のことをいいます。「梅雨の走り」といった表現もあります。
梅雨の中休み
梅雨の最中なのに雨がやみ天気が1度回復するようなことを言います。
暴れ梅雨または荒梅雨
梅雨の末期の強い雨のことを言います。梅雨の末期というと、かなり降水量の多くなり、雷を伴うこともありますよね。こういった暴れ、荒れた天候のことです。
送り梅雨
これも梅雨の末期の雨のことを言います。梅雨を送って次の季節(夏)を迎える雨と意味です。
帰り梅雨または戻り梅雨
雨も止み、夏がきたかと思ったら、また梅雨前線が南下して雨を降らすっといったような梅雨の雨です。
空梅雨(からつゆ)
梅雨入りはしたのにあまり雨が降らないことをいいます。梅雨の時期に雨が降らないと、農作物に影響が出てきます。特に稲作です。日本の稲作は「梅雨に雨が降るという」風土の下に成り立っています。だから秋にできるお米の品質にも影響が出てきます。
入梅(にゅうばい)
この言葉は梅雨の状態を表す言葉ではありません。こよみの1つで、6月11日ころです(「節分の由来」でご紹介した「立春」と同様で、前後します)。「梅雨に入るころ」という意味です。
梅雨寒または梅雨冷
また、これらの「梅雨寒」や「梅雨冷」は梅雨の肌寒さを表す言葉です。雨が降ると太陽の日差しも届かず、気温もあまり上がらないので少し小寒さを感じることがあると思います。こういった涼しさを表す表現です。
ちょっとブレイク~アジサイの花は???

梅雨の季節の花としてアジサイを思い浮かべる方が多いと思います。「きれいな花びらがいっぱいで、かつ青や紫色があって」・・・なんて思ったあなた、大間違いですよ。あなたが花びらだと思っている部分、本当は花びらではありません。
多くの方はアジサイの「がく」の部分を花びらだと思っていますが、本当の花びらはその中央にある小さいおしべとめしべのところにあります。一度アジサイを見つけたら確認してみてください。
あと、「青色や紫色」はアジサイが植えられている土の状態によります。土が酸性だと青色色が強くなり、逆にアルカリ性だと赤色が強くなっていきます。これも一度鉢植えのアジサイで1年目は酸性、翌年はアルカリ性に変えて試してみると面白いです。
最後に・・・
「五月(の)雨」と書いて「さみだれ」と言ったり、「五月(の)晴れ」と書いて「さつきばれ」と言ったりしますよね。この五月雨や五月晴れはどちらも旧暦の5月を表します。
(「節分の由来」でもお話ししましたが)「旧暦」現在私たちが使っているこよみ(太陽暦)より1カ月ほど遅く始まります。つまり、五月雨はちょうど梅雨の季節で、五月晴れはそんな梅雨の中休みのことなのです。これを知ったうえで「五月雨」や「五月晴れ」が詠まれている昔の和歌や俳句を読み直してみると違った情景が浮かんでくるかもしれませんね。
また私はこの季節、雨音に耳を傾け、雨を楽しむのも素敵だと思います。それこそ俳句や短歌を作るのも面白いし、アジサイを見に出かけたりカエルの鳴き声を聞いたり、水琴窟の音色を楽しめるところへ出かけるのも乙ではないでしょうか・・・。
ぜひ、あなたの雨の日の楽しみ方も教えてください。