平安時代から伝わる日本の神秘的な存在、陰陽師。彼らは天文学や占術、そして霊的な力を駆使して朝廷や貴族に仕え、災厄を予知し、魔を払う役目を請け負っていました。時には国家の守護者としても重要な役割を果たしました。
そんな陰陽師が使役した霊的な存在として知られるのが「式神」です。式神は、陰陽師の命令を受け、霊的な活動を行う使者や守護者であり、その姿や力は実に多様です。式神を操る陰陽師は、強力な霊力と技術が求められ、その制御には高いリスクが伴うこともしばしば。
それゆえ、式神は単なる「使役される存在」ではなく、陰陽師の霊力の象徴とも言える存在でした。本記事では、式神がどのような存在であり、どのようにして使役されたのか。また陰陽師との関係や、さまざまな式神の種類について詳しく解説していきます。
式神とは
陰陽師が使役した「式神」は、陰陽道において陰陽師が召喚・操作する神、または鬼のことです。式神は、陰陽師の霊力を通じて呼び出され、様々な任務や役割を担います。主に守護や魔除け、霊的な障害の除去、あるいは情報収集などに使役され、陰陽師の活動を補佐する重要な存在です。
人の目には見えないので、陰陽師以外は存在を確認できません。
陰陽師と式神の関係
陰陽師は、式神を呼び出して使役するために、特定の呪文や儀式を行います。陰陽師と式神の関係は、主従関係として描かれることが多いです。陰陽師が指示を与え、式神がそれに従うという形を取ります。
式神の役割は多岐にわたります。特定の任務を遂行する使者や護衛としての役割、さらには災厄を避けるための結界を張る役割、悪霊や邪気を退けるための力など。陰陽師が行う霊的な仕事を補佐します。
式神を操るためには、陰陽師が高い霊力と知識を持っている必要があります。式神は強力な霊的存在であるため、制御に失敗すると暴走し、陰陽師自身に害を及ぼすこともあるのです。また、式神を使って人を陥れようとするとその呪いは自分に返ってくると言われています。
「人を呪えば穴二つ」というやつですね…。
式神の種類
日本の陰陽師が使役したとされる「式神」には、さまざまな種類があり、その形態や役割は陰陽師の能力や目的によって異なります。式神の種類は大きく分けて主に3つです。
思業式神
「思業式神」は、陰陽師の思念によって作り出された式神のことを指します。術者の意識や実力次第でその力は大きく異なり、姿形を自由に変化させられることが特徴です。陰陽師の力が弱ければ体現することは不可能とされ、術者本人の力量が顕著に出る式神とされています。
しかし思業式神は陰陽道の中で非常に特殊かつ限られた伝承や文献にしか登場していないため、謎が多い存在です。
擬人式神
「擬人式神」は、依り代として和紙や藁人形が使われ、これに陰陽師が霊的な力を込めることで、式神として動かすことができる存在です。擬人式神は、陰陽師の意図した能力や姿をして現れる特別な式神とされています。依り代に意志が込められているかいないかで存在の上位と下位が分かれました。
擬人式神は陰陽師の中で最も使役された式神で、特定の人物や場所を守るために召喚され、護衛や結界の役割を果たしました。擬人式の式神は、その霊力を持って悪霊や厄災を防ぐ役割を果たしたのです。現代のアニメやドラマでよく目にする式神は、その特徴から擬人式神である可能性が高いです。
人だけでなく獣の姿を取ることもあるようですね。
悪行罰示神
「悪行罰示神」は、過去に悪行を行った者に神や霊を調伏し、式神として従えたものを指します。その性質上、元は荒神や悪霊である場合が多く、陰陽師が十分な霊力や知識を持っていない場合、式神が暴走する危険がありました。
その分非常に強力な式神として知られ、かの有名な安倍晴明は悪行罰示神を使役するのが得意分野であったと言われています。また、安倍晴明が使役した「十二天将」はこの悪行罰示に該当するとされているのです。
安倍晴明は悪行罰示神に家事まで行わせていたそうです。
十二天将と安倍晴明
日本の陰陽師の中で最も有名な人物の一人である安倍晴明は、十二体の式神を使役したと伝えられています。彼の式神は強力な霊的な存在であり、国家や貴族を守るために活躍しました。晴明の式神は、特に制御が難しいとされていましたが、彼はその強大な霊力と知識で見事に操っていたとされています。
十二天将の名は以下のとおりです。
「騰蛇」、「朱雀」、「六合」、「勾陳」、「青龍」、「貴人」、「天后」、「大陰」、「玄武」、「大裳」、「白虎」、「天空」
十二天将は、陰陽道における非常に強力な精霊です。古代中国の占星術や暦学の影響を受けており、それぞれの天将が特定の方位や時間、星座に対応しています。安倍晴明は十二天将を、人の善悪を見破るときに使役していたのです。
安倍晴明と十二天将は陰陽師の歴史と文化に大きな影響を与えました。
さいごに
陰陽師と式神は、日本の伝統的な霊的文化の中で特異な存在感を放っています。式神はただの霊的な存在ではなく、陰陽師の霊力を表現する一部です。その力を借りて災厄を防ぎ、人々を守る重要な役割を果たしてきました。
式神の種類や姿は陰陽師の技量や霊力に依存します。時には自然現象や動物、さらには人形といった依り代を通じて現れ、その多様性も興味深いものです。現代では、陰陽師や式神の存在はフィクションの中で親しまれることが多いです。しかしその背後には、古代の人々が自然や霊的な力に向き合い、恐れ敬った歴史が色濃く残っています。
時を超えて語り継がれる陰陽師と式神の物語は、私たちに今もなお、多くのことを教えてくれるのです。
