みなさんのご家庭では味噌汁をよくお飲みになりますか?どんな味噌を使うのでしょう?「赤味噌」でしょうか?それとも「白味噌」?
味噌の種類を尋ねる時このように「赤」か「白」かを聞くと思うのですが、本当はこの2つでは分類できません。本来は色で分類するのではなく「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」といった分け方がされます。
今回はこういった「米」「麦」「豆」味噌とはどんなものか。また味噌の色、辛口・甘口についてのお話です。
目次
味噌の種類

味噌というと「大豆から作られる」ことはみなさんご存知のことかと思います。このような大豆から作られる味噌も大きく4つに分類できます。それは「米味噌」「麦味噌」「豆味噌」そして「混合味噌」です。
米味噌とは~米麹を使って作られます
はじめに米味噌についてです。「米味噌」とは(お米に麹菌を繁殖させた)米麹を使って大豆を発酵させる味噌のことを言います。日本で販売されている味噌の約8割がこの米味噌です。
北海道、東日本、北陸地方、近畿地方などでよく作られています。米麹や塩の量、発酵時間、色の濃淡など一言で「米味噌」といえど各地で違いがみられます。
麦味噌とは~麦麹を使って作られます
(米味噌が米麹を使って作られるのに対して)「麦味噌」ははだか麦や大麦などを使って作られた麦麹を使って作られます。四国地方、九州地方、瀬戸内地方でよく作られます。
麹の割合が多く、塩分も比較的少なめなので、麦の甘さや香ばしさを感じることができます。また麹の量が多いので(他の味噌と比べて)発酵スピードも速く、変色しやすいのが特徴です。
豆味噌とは~いわゆる赤味噌です
豆味噌は大豆から作られる豆麹を使って作られます。この豆味噌は東海地方の3つの県(愛知県、岐阜県、三重県)で作られています。
皆さんも「八丁味噌」という言葉を1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?これは愛知県で作られる豆味噌のブランド名です。
この八丁味噌は愛知県岡崎市発祥で、岡崎城から八丁(約870m)の距離にあった村で作られ始めたことが由来しています。
色は黒色っぽく、味噌汁は茶色になります。「赤味噌」と言われますが、「白味噌」に対しての赤味噌です。(米味噌や麦味噌の発酵期間は長くても1年くらいなのに対して)豆味噌は短くても約1年、長い物では3年もかかります。色が濃いのはこのためです。また、この発酵の長さから味噌にコクも生まれます。
一言で豆味噌と言ってもいろいろあります。私の住む岐阜県も豆味噌を食べますが、岐阜県の中央部に位置する郡上市の味噌は豆の粒がまだ残っています。それに少し酸っぱいのも特徴です。
混合味噌とは
混合味噌は「合わせみそ」ともいわれます。例えば「豆味噌」と「麦味噌」のように2種類以上の味噌を混ぜ合わせ味噌のことです。1種類の味噌だと角が立つような味噌でも、混ぜることでコクや香りなどがなじみ、まろやかになります。
例えばスーパーで売られている「赤味噌」には豆味噌のほかに米味噌が加えられていることが多いようです。このほかにも米味噌と麦味噌を混ぜ合わせた味噌などもよく売られています。
ちょっとブレイク~味噌の起源・中国伝来?

ひな祭りなどの節句にしろ、煎餅やあられにしろ、日本に昔からある文化や食べ物など中国からやってきたものが多いと思います。味噌も「中国からやってきた」という節と「日本独自に作られた」という説の2つがあります。
中国から来たという説
「昔の中国から入ってきた文化」というと、そうです「遣唐使」です。平安時代に遣唐使により持ってこられたという説です。「醤(ひしお・ジャン)」がルーツといわれています。「味噌」という名も「未(いま)だ醤にならないもの」という「未醤」が語源になったといわれています。
日本独自にできた説
また日本で独自にできた説というのもあります。弥生時代に豆を使って今でいう魚醤のような液体を作っていたといいます。これが味噌に変わっていったという説です。
もしかすると日本にもともとあった味噌(のはじまり)と遣唐使により持ち帰られた中国の技術が混ざり、現在のような味噌へと変わっていったのかもしれませんね。
色の違い

ここからは味噌の色についてご紹介します。
味噌の色には(先ほども出てきました)赤味噌のほかにも淡色味噌や白味噌という分類があります。味噌の色の違いが発生する理由は科学的に解明されています。これはメイラード反応が起こる度合いによるのです。
メイラード反応とは
メイラード反応とは原料の大豆に含まれる糖、タンパク質やアミノ酸が熱により褐色に変化していく反応です。でもここで言う「熱」は「加熱する」ことでの加わる熱ではありません。麹菌で発酵が進むときに出てくる熱で起こります。
メイラード反応(褐色に変化)が進む条件
味噌づくりにおけるメイラード反応(色の変化)が進むための要因がいくつかあります。1つ目は大豆を蒸すのか煮るのか製造法の違い、2つ目は発酵に使う麹の量、3つ目は発酵時間、4つ目は塩分量などです。
赤味噌は大豆を蒸すのに対して白味噌は水で煮ます。煮ると煮汁の中に水溶性のたんぱく質が溶け出てしまいます。だからその分色が薄くなります。
麹の量と発酵時間は、麴が多いほど、また発酵時間が長いほど反応が進み、色が濃くなります。
豆味噌のところでもお話ししましたが、米味噌や麦味噌は長くても1年だったのに対して豆味噌は長いと3年くらい発酵に時間がかかります。
さらに塩分量が多いと色が濃くなります(白味噌の塩分濃度は5~6%なのに対して赤味噌は10~20%です)。
味噌の「辛口・甘口」

辛口、甘口というとアルコールの好きな方はワインや日本酒を思い浮かべると思います。味噌にも辛口や甘口があります。白ワインは糖度で、日本酒はアルコール度数で辛口・甘口決まっていました。
味噌の辛口・甘口はそれぞれ全く別の要素の組み合わせで決まります。辛口は塩分濃度、甘口は麹の割合で決まります。塩分濃度が高い味噌は(「塩辛い」といった意味の)「辛口味噌」といいます。また、麹菌の割合(麹歩合・こうじぶあい)が大きいものが甘口です。
最後に・・・味噌にお酒が
今回味噌の種類についてお伝えしました。あなたのお宅ではどんなお味噌をお使いでしょうか?ぜひお宅でお使いの味噌のパッケージを改めてよくご覧ください。
補足ですがパッケージの裏側の「原材料」の欄に「酒精」という文字があると思います。これはアルコ―ルのことです。味噌づくりにはアルコールは必要ありません。しかし出荷の際にアルコールが必要となるのです。
実はこのアルコールで麹菌を酔わせ、これ以上発酵が進まないようにしています。味噌はほとんどの場合(冷蔵棚ではない)普通の棚で販売されているかと思います。これはアルコールのおかげです。
もし酒精が加えられていないと発酵がどんどん進みます。麹菌は発酵と同時に二酸化炭素を放出します。もし発酵し続けると味噌が入っている袋がパンパンに膨れ上がり、破裂してしまう可能性があるからです。
アルコール度数でいうと3~4%なのです。しかしアルコール飲料のように味噌をそのままバクバク食べる人はいないでしょう。また、調理の際にアルコールが蒸発もするので、酔うことはないのでご安心を。