こんにちは!モクレン福祉コラム担当のもち猫です!
今回のテーマは「統合失調症の4つのステージ」についてです。統合失調症は考えや気持ちがまとまらないといったような症状が表れる病気で、その原因は脳の働きが上手くいかなくなったことによるものとされています。
症状には陽性症状と陰性症状という2つの症状があり、障害の段階により表れ方も違ってきます。思春期から40歳代に発症しやすいとされており、約100人に1人がかかるかもしれないと言われています。決して稀な病気ではありません。
もち猫も17歳の時に統合失調症になり、入院治療を経験しました。もち猫の場合、陰性症状が優勢で、一日落ち込んだ気分が続いたりふさぎこんだりして、自傷行為を行ってしまうこともありました。
統合失調症は、段階を踏んで治癒していく病気です。今回は、その「4つのステージ」について解説していきたいと思います!(外来治療を想定したコラムです!)
少しでも統合失調症の症状を理解して頂けたら幸いです。
目次
■統合失調症の2つの症状~陽性症状と陰性症状とは?~
まず、統合失調症の症状である「陽性症状」と「陰性症状」について解説していきます。
★陽性症状ってどんな症状?★
陽性症状とは、幻覚や妄想といった現実にはないはずのものが見えたり聴こえたりしてしまう症状です中でも多く見られるのが、実際に人が話しているわけでもないのに声が聴こえてくる「幻聴」です。
自分の悪口や陰口を言っていたり、また何かの命令の様な形で聴こえてくる、そしてテレパシーといった形で言い表されることもあります。
「妄想」としては例えば「〇○さんが私の悪口を言いふらしている」や「あの車に乗っている人は私のことを見張っている」等といった不合理な考えが頭に浮かんでくることもあります。
また「私は○○というアイドルの子どもだ」といった誇大妄想と呼ばれる妄想が見られることもあります。会話や考えにまとまりがなくなるのも陽性症状の特性です。
話が次々に飛んだり、辻褄が合わないことを言ったりします。その為、周囲は当事者の苦しみを否定してしまったり、理解しようとしなくなってしまうのです。
★じゃあ、陰性症状は?★
陰性症状では「感情の平板化」といって感情の動きが鈍くなる症状があります。ただボーっとしているのではなく「感情そのものがなくなっている」といった感じでしょうか。顔に表情がなくなります。
また、意欲や気力の低下も目立ちます。発症する前はやれていたことにまでやる気がわかなくなったり、新しいことに挑戦しようという意欲もなくなります。そういった気力の低下から、部屋に閉じこもりがちになる、あまり喋らなくなるなども特徴の一つです。
★認知機能障害って?★
統合失調症になると、‶認知機能障害〟というものも起こる事があります。自分にとって不必要な情報まで取り入れてしまい、不快な思いをすることがあります。
例えば他人と話している時に周囲の音(車やテレビの音など)が気になって会話に集中できないなど、注意力がなくなってしまう、などです。
脳が必要な情報と不必要な情報を取り分けられない状態、とでも言いましょうか。
■統合失調症の始まり~前兆期とは~
この時期には統合失調症を発症する前兆がみられます。眠れなくなったり、焦燥感に襲われる。また、音や光に敏感になったり急にイライラしだしたり……。
しかし、これは誰もが経験することなので、「統合失調症の前兆だ」と気づかないこともあります。
■統合失調症第2期【急性期】~陽性症状が活発に!~
前兆期に続いて表れるのが「急性期」です。
不安や緊張感などから、先ほど紹介した「陽性症状」や「陰性症状」が顕著になる時期です。眠れなくなったり、感覚過敏になったり、幻聴や妄想、認知機能が上手く働かなくなったり。人によって表れる症状は様々ですが、これらは身体障害のように他の人に「目に見えるもの」ではありません。
そのため、いくら「自分は○○で辛いんだ!」と訴えても、周囲に理解されづらいものでもあります。特に幻聴や妄想は他の人にとっては「あるはずのないもの」と考えられるため、余計理解されることが難しいです。しかし、本人が辛い思いをしているのは事実なのです。
★急性期の治療★
急性期の治療法の主は薬物療法です。幻聴や妄想・イライラを抑える薬が処方される場合が多いと思われます。薬を処方されたら、適量を医師の指示の下服用していってください。
特に陽性症状には抗精神病薬がよく反応する傾向にあります。治療は早いほど予後も良くなりやすいので、もし前述の様な症状が続く場合は、精神科や心療内科を受診することも一つの手だと考えてください。
■統合失調症第3期【休息期】~感情の平板化や意欲の低下~
嵐の様な陽性症状が治まると、今度は無為になったり無気力になったりして陰性症状が目立つ「休息期」に入ります。急性期にエネルギーをかなり消費してしまったことから、この時期はエネルギーの充電の時期でもあると言えます。
過眠になったり、気力がわかないことから家から出たくなくなったりします。しかし、こういった時に家族等周囲がとがめるような言葉を言うと、また症状が再燃してしまうこともあるので要注意です。
前述したように過眠になったり、体のだるさを訴えたりするのは、休息期にエネルギーを使いすぎたせいで、怠けやだらけではありません。あくまでも‶病気の症状〟なのです。
急性期で使いすぎたエネルギーを充電するために、たっぷり休むことが必要となってきます。しかし、いつまでもだらだらしていていいというわけではありません。
休んでいる間も、規則正しい生活を心がけ、バランスのとれた食事をして、社会に出る準備をしていかなくてはなりません。「ただダラダラする」のではなく、「いずれ社会に戻ることを意識し、必要に応じて休息をとる」といった感じでしょうか。
確かにエネルギ―を蓄えることは必要ですが、生活のリズムを整えていくことも大切です。
★休息期の治療★
この時期は、前述のようにたっぷり休息をとることが大切です。医師の指示の下服薬をしながら、日常生活を送れるように生活のリズムを整えていきます。(統合失調症では、急性期を過ぎた後でも服薬が必要な場合が多い傾向にあります。)
急性期で疲れた脳はまだ治ってはいません。その為、服薬に併せてリハビリテーションも必要となってきます。リハビリテーションといっても様々で「日常生活の様々なことを行う」こともリハビリテーションの一つです。
例えば部屋の掃除や、家族との会話、家事の手伝いなどです。これも「脳を使う」ことに変わりはありませんので、リハビリテーションの一つと言えるでしょう。
統合失調症当事者は日常生活に「生きづらさ」を感じているのですから、日常生活に即したことから始めることが大切です。障害はあっても「生活の質(=QOL)を上げる」ことが統合失調症のリハビリテーションの目的の一つとも言えます。
■統合失調症第4期【回復期】~社会復帰に向けて~
回復期では、休息期で蓄えたエネルギーで元気・やる気が戻り始め、だんだん活動的になってきます。しかし、統合失調症は薬の服薬は長い間続ける必要がある場合が多いです。そのため、医師の診断にもよりますが、この時期も薬は服薬し続けることになるでしょう。しかし、できることも増えてきます。
具体的には、テレビや音楽が楽しめる様になったり、読書ができるようになったり、病前に好きだったことができるようになったり……。
仕事や学校にも行き始めることができるかもしれません。ただ、やはり最初は心配がつきまとうものです。「前のようにできるかな……」と考えてしまうかも知れませんが、「ダメで元々」という軽い気持ちで始めてみるのがいいと思います。
最初から完璧を目指そうとしても、この時期は症状から回復していく時期なのですから、「病前のようにできなくて当たり前」なのです。
まずは「自分のできることから」始めてみましょう。また、いきなり仕事や学校に行けなくても、デイケアなどにも通うことを考える方がいるかもしれません。精神科にはデイケアが併設されていることも多く、そこで仲間と一緒に作業に取り組むことが、社会性を取り戻す第一歩ともなります。
また仲のいい友人ができたり、料理を学ぶことによってバランスの良い食事が食べられるようになったりと、良いことは沢山あります。
もし「外の世界に出てみたいけど、きっかけがない」等と思ったら利用してみるといいのではないでしょうか。
★回復期の治療★
この時期にも服薬はしますが、急性期の陽性症状を抑える薬というよりは服薬を継続することで、症状が再燃することを防ぐことを目的とします。
急性期の症状が落ち着いたところで、それを維持するための薬が使用されることが多いようです。(医師の判断によります)
そして前述したように社会復帰に向けての大事な時期でもあります。いきなり学校や仕事は無理でも、デイケアや福祉的就労を考える人も出てきます。
しかし、気をつけなければならないのが「焦り」。
「同僚はもうあんな仕事をしている」「学校の勉強についていけるだろうか」と焦ってしまう気持ちもあると思います。しかし、この時期では「自分のできることを自分のペースで」行っていくことが大切です。周りと比べて「劣っている」などと考えなくてもいいのです。病気をしたことで少し遠回りになってしまっただけなのです。
服薬が必要ならきちんと続けながら、自分の体調を第一に考え、社会復帰をめざして一歩ずつ歩んでいってください。
■統合失調症4つのステージまとめ
統合失調症の4つのステージと治療法(外来治療編)をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?
もし前述したような症状が長引いて続いているようでしたら、精神科や心療内科を訪れてみるのも早期発見のカギとなる場合があります。
早く見つければ、それほど予後も良くなる可能性が高くなります。
統合失調症は再発しやすい病気でもあります。再発すると薬の効きが悪くなったり、多くの方が入院治療を受けることになります。
そうならないためにも、薬が処方されたら医師の指示の下きちんと服用し、デイケアなどの社会資源も活用していってください。何か社会資源を使いたいと思ったら、精神科などに配置されている精神保健福祉士(PSW)に相談するといいと思います。
手帳の制度や自立支援制度、デイケアの利用についてなど様々な事を教えてくれます。
統合失調症は人によってそれぞれ症状の表れ方も違いますので、前述のようなことがすべての人に当てはまる、とは言い切れません。
やはり、精神科や心療内科などの専門家に診断してもらう必要があり、早く発見できた場合には早い回復にもつながります。
統合失調症であるないにかかわらず「心の調子がおかしいな」という状態が続いたら、精神科や心療内科を受診する、ということも考慮していってほしいと思います。
このコラムが少しでもお役に立てれば幸いです。
著者 もち猫
福祉系の大学卒業と同時に社会福祉士、精神保健福祉士資格取得。統合失調症。自分の体験談なども織り交ぜながら、主に福祉系のコラムの執筆を担当。
